アテネ・パラリンピックの開幕前、スポーツジャーナリストの玉木正之氏のコラムをたまたま読んだのだが、あまりのヒドさに唖然としてしまった。以下、抜粋して紹介させていただく。
「 9月17日から12日間にわたって、アテネ・パラリンピックが開催される。何人かの日本代表選手を紹介したい。オリンピックよりも素晴らしいパラリンピック! さあ、みんなで応援しよう!
▼加藤裕司さん(視覚障害者柔道)
内股が得意で、全盲の加藤さんは、右手(釣り手)の感触で相手の動きを読み、相手の動きを封じる。
▼成田真由美さん(頸椎損傷競泳)
成田さんは、過去のパラリンピックで金メダル6個、銀メダル1個と大活躍をしている世界的スイマー。
(…中略…)
――数多くの種目で日本人選手の活躍が期待されています。障害者スポーツこそ本物のスポーツである、と確信している小生は、皆さんとともに、パラリンピック日本代表選手を心から応援したいと思っています。 」
何がヒドイって、まず参加選手を全て「さん付け」で紹介しているのだ。例えば「成田真由美選手」ではなく、「成田真由美さん」と紹介しているのである。言うまでもないが、こんなものは差別以外のナニモノでもない。
オリンピック選手の紹介で、「ハンマー投げの室伏広治さんには金メダルの期待がかかります」と言うか? イチロー選手を紹介するときに、「メジャーリーグで大活躍のイチローさん」などと言うか? それとも玉木氏は、スポーツ選手を「さん付け」で呼ぶ第2の増田明美か?
プロのジャーナリストがこれだけアカラサマな差別をするなんて、ちょっと考えられない。ゴーストライターじゃないのか?
ついでに、過去のパラリンピックで成田選手が獲得したメダル数が、全く間違っている。正しくは金メダル8個、銀メダル3個、銅メダル1個。おそらく玉木氏は、成田選手がアトランタ・パラリンピックから活躍していることすら知らず、カウントし忘れたのであろう。
さらに、聞き捨てならない一言がある。「障害者スポーツこそ本物のスポーツである」というコメントだ。
我々スポーツファンは、健常者のダイナミックな競技に魅せられ、健常者のスポーツを観る。その一方で、障害者が限られた条件の中で戦う競技も、またスポーツの面白さとして魅せられるのだ。どちらも「本物のスポーツ」である。なぜ障害者のスポーツだけを特別扱いして観なければならないのか。
「障害者スポーツこそ本物のスポーツ」というコメントは、例えば「女性のスポーツこそ本物のスポーツ」と言っているのと同じ。障害者スポーツを我々にオススメしてくれるのは有難いが、「女性だから」とか「障害者だから」と言うつまらない差別思想でスポーツを観ているジャーナリストに、「皆さんとともに」などと言って我々と一緒にしないで頂きたい。
当コラムでは、何年も前から何回も紹介している。「なぜ私達は呼び捨てで報道されないのだろう」という成田真由美選手の嘆きを。
SPORTS OVERNiGHT
|