FACT OR FICTION ?  2005 / 09 / 09 
「ラグビートップリーグが導入するプレーオフは、日本ラグビー界を盛り上げる」

存知のとおり、日本プロ野球のセ・リーグがプレーオフの導入に踏み切りそうな勢いだ。そんななか、示し合わせたかのように、日本ラグビー界でもプレーオフの導入が決まった。来季からマイクロソフトカップが廃止となり、リーグ戦上位4チームによるプレーオフ(トーナメント)によって、トップリーグのチャンピオンが争われることが決定したのである。

つまり、各チームがリーグ戦を戦って順位を決めた後に、1位から4位のチームが均等に優勝の可能性を与えられるノックダウン方式のトーナメント(1位チーム対4位チームの勝者と、2位チーム対3位チームの勝者が、決勝を戦う)を、プレーオフとして行うのである。

一体全体、どうしてこういう発想が日本では流行っているのだろうか。現行のパ・リーグのステップラダーに対しても疑問の声が多いというのに、これまで日本のアマチュアスポーツ界がやたら取り入れてきたこのノックアウト方式のトーナメントで、どれだけファンを白けさせてきたことか、全く認識していないように見える。

んざんリーグ戦を戦って順位を決めた後、その上位チームで再び決勝トーナメントをやり直すというプレーオフは、Vリーグや日本アイスホッケーリーグなどで取り入れられてきた。韓国プロ野球なども、然りである。

これらのリーグには、明らかな共通点がある。人気が下降の一途を辿って、ニッチもサッチもいかなくなったことである。優勝争いの本当の意味でのオモシロさを仕方なくかなぐり捨て、意味のある試合を行う期間を無理矢理に拡張し、なりふり構わず「つまらない」プレーオフを導入したのだ。

そしてもう1つ共通点を挙げると、リーグを構成するチームの数が少なく、たったの6チーム前後が多くの試合を戦う形態であったこと。つまり、1つのチームが独走して、シーズンの終盤がつまらなくなる可能性も高いため、最後まで興味を持続させるためにプレーオフを導入したということだ。藁をも掴む改革案としては、この形式のプレーオフ導入も、まだ理解できなくもなかった。

だが、ラグビートップリーグは状況が全く違う。

グビートップリーグはチーム数を増やす方針で、来季から14チームが参加する。しかも競技の特性上、試合数が少ない。リーグ戦は1回戦総当りで、14チームがそれぞれ13試合しか戦わないことになる。

つまり、試合数がバカみたいに多い日本プロ野球や、チーム数が少ないVリーグなんかとも違い、1つのチームが終盤に独走しリーグ戦がつまらなくなる可能性は、かなり低いのだ。ややもすれば、リーグ戦1位になる可能性があるチームが最終節まで4チームくらい残っている、なんていう状況になる見込みすら高い。

そんな4チームが白熱の1位争いを最終節まで展開した直後に、その4チームでトーナメントのプレーオフをやるなんて、ほとんど旨みがない。プレーオフ自体の意味が極めて小さいのだ。何より、せっかく最後まで接戦になる可能性が高いリーグ戦の価値が、著しく下がってしまう。

して、このような「決勝トーナメント型」のプレーオフを導入する一番の問題は、やはり日本選手権の存在である。

トップリーグのプレーオフに出場しトーナメントを戦った4チームが、そのままそっくり日本選手権のベスト4に残ってまた日本一を争うなんてことは、かなりの確率であり得るシナリオだ。

ほとんどのラグビーファンは、「日本一を決める大会は日本選手権である」と認識している。Jリーグとサッカー天皇杯との関係とは全く逆の、不健全な状態になっているのである。結局、トップリーグのプレーオフ、ひいてはトップリーグの存在そのものが、その直後に行われる日本選手権によってかき消されてしまうのだ。

そもそも、トップリーグを本当に盛り上げて日本ラグビーを活性化したいと言うなら、トップリーグの白熱の戦いを一気に霞(かす)ませる日本選手権なんて、まずスッパリと廃止するべきである。どうしても続けたいなら、トップリーグと日本選手権をそれぞれ夏と冬とに大きく分けるべきだ。

ッカーリーグをはじめ世界の色々なスポーツリーグを観ても、アメリカのプロスポーツリーグを観ても、トップリーグがいま導入しようとしているようなツマラナイ形式のプレーオフは、ほとんど見当たらない。日本でも、例えばJリーグがこのようなプレーオフを導入するなんて言い出したら、ファンは何と言うだろうか。

意味あるゲームを増やせば、確かに目先の観客動員数は増えるかもしれない。しか し、裾野が広がらず、人気も実力も一向に上がらない現状に苦しむ今の日本ラグビー界が目指すべきことは、もっと根本的なことであるハズだ。

どうしてもプレーオフで盛り上がりたいと言うなら、2つのカンファレンスに分け てホーム&アウェーでリーグ戦を行ない(もちろんインターリーグあり)、カンファレンス代表同士で最終決戦を行うNFLライクな方式にするなど、もう少しマトモに楽しめるフォーマットも、ヤマほどあるではないか。

日本のプロ野球とかアマチュアのスポーツリーグばっかり観ていないで、もっと広い視野を持ち、そして独創性を発揮して欲しい。ラグビーにしてもアメフトにしても、競技自体がこんなに面白いのだから、本当に勿体無い話である。

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