FACT OR FICTION ?  2005 / 09 / 17 
 「野球論者には、野球経験が絶対必要だ」

う1年も前の話で恐縮なのだが、某テレビ番組で大沢啓二氏が、スポーツライターの玉木正之氏のコメントに対して、「野球もやったことないクセに偉そうなことを言うな!」と立腹し、話題になったことがあった。

だが、こんな明らかな話はない。野球経験のある野球論者も、野球経験のない野球論者も、どちらも居たって良い。個人的な印象だが、我々のような野球経験者の語る野球論よりも、非経験者の語る野球論のほうが面白いことだって、相当多い。

しかに、野球経験のない評論家が妙な野球論を展開することも、少なくはない。例えば玉木正之氏は著書(「プロ野球大辞典」)の中で、

「同点で迎えた9回ウラ一死走者三塁という場面で、外野フライを打たれた投手が捕手のバックアップに走る行為は、全く無駄な行為である。なぜなら、外野からの送球がそれた時点で既にサヨナラ負けだからである」

といった野球論を展開し、このようなプレーをした元巨人の木田投手を槍玉にあげ、「巨人軍は何も考えてないで野球をしている」と激しく批判している。

だが、巨人軍と木田投手の名誉のために是非とも指摘しておきたいのであるが、このバックアップは決して無駄ではない。例えば、三塁走者が途中で転倒したりした場合、このバックアップによりサヨナラを防ぐことができる可能性があるからだ。

た、ご存知かも知れないが、玉木氏は以下のような思想を以前から繰り返し主張している。

「高校野球などでは、無理に引っ張らず球に逆らわないバッティングが礼賛される。素直で逆らわない従順な良い子を育てる日本の教育思想が反映されている・・・云々」

・・・従順な子ばかりを育てるのが良い思想だとは思わないのは全く賛成なのだが、さすがに「球に逆らわないバッティング」とは全く関係ない。

球に逆らわず打ち返すことがチームのために最善の方策であるのなら、思い切り引っ張りたいのを我慢して、チームのために逆らわないバッティングを心がけるのは、チームプレーとして当たり前だ。ひとりひとりがこういった心掛けをすることこそ、チームスポーツの本質ではないか。

これを悪だと言うなら、打ちたいのを我慢させて送りバントをさせることも悪ということになる。チームスポーツをロクにやったことがない人間ならではの発想なのかも知れない。

かし、たまに見受けられるこのような理解に苦しむ野球論は、野球経験よりも、想像力、もっと言えばスポーツを観るセンスの問題である。経験なんか無くたって、「球に逆らわない方が良い結果がでることが多い」ことを、野球ファンは知っている。ほんとうに野球が好きな人ならば、無理に引っ張ろうとして引っ掛けてしまった草野球程度の経験くらいあるだろう。

「打ち込まれた投手の気持ちや、ピンチの場面での野手の気持ちは、経験者じゃないと分からない」と言うひとも居るが、そうは思わない。確かに私なんかも、「エラーしたらサヨナラ負けで高校野球が終わる」という場面で内野ゴロを捌いた経験などは、何物にも換え難い経験ではあるとは思う。だが、やっぱり想像力さえあれば、皆様にも分かることであろう。

そもそも、こういった場面でどういう気持ちになるかなんて、選手によって全く違うのだ。たとえ経験者であっても、全ての選手の気持ちを正確に代弁することなんて不可能である。

して何より、「野球経験者でもないクセに」と感じることよりも、「野球経験者のクセに」と感じることのほうが、圧倒的に多い。「元プロ選手の解説者」が、明らかにハチャメチャなプレー解説を連発するという事実は、我々のような「元プロ選手ではない野球経験者」にとっては永遠のナゾだ。

別にボールの握り方とかバットの振り方ばかりを知りたいわけでもなく、少年野球チームの監督になって欲しいわけでもない。野球経験者が、野球経験のない野球ジャーナリストに向かって、「野球経験もないクセに」と言うのは、ナンセンスである。むしろ、「野球経験者のクセに」と言われないように、野球経験者が頑張らないとイケナイ。

「文科系」出身のスポーツジャーナリスト達も、それはそれで胸を張れば良いのではないか。「外からスポーツを見たほうが正しいことが書けると思った」とか、「ほんとうは野球をやりたかったが、事情があってできなかった」とかなんとか言い訳がましくプロフィールに書くプロのスポーツジャーナリストがやたら多いが、それこそみっともない。

実に僭越な論調で恐縮ではあるが、野球経験が無い野球論者、或いはスポーツ経験が無いスポーツジャーナリストだからって、そのこと自体には何ら問題はなかろう。

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