FACT OR FICTION ?  2005 / 10 / 08 
 「プロ野球は、時計片手に観るべきだ」

・リーグのレギュラーシーズンも終わり、セ・リーグの優勝も決まった日本プロ野球。巨人戦の視聴率は落ちているが、プロ野球人気自体は落ちていない、なんて主張もたまに聞くが、今年のプロ野球を振り返ってみても、その考え方は甚だ疑問である。プロ野球が、娯楽として魅力を失いつつあることは、明らかだ。

幾つも理由はあるが、大きな理由の1つとして、とにかく進行が遅すぎる。

何秒も待たせた末に、牽制球。やっと投げたかと思うと、ファウル。さんざん待たせておきながら、得点やアウトカウントはおろか、投球カウントまで変わらないことも多い。こういった独特な性質がある野球においては、進行が遅いのは致命的だ。

にもかかわらず、試合の進行が、運営側のクロックではなく、選手の裁量にほぼ100%委ねられている。その時点で、いまの野球の運営は異常であり、ファンに見せるプロスポーツとして大きな欠陥を抱えている。

たとえば一度、秒針付きの時計やストップウォッチを片手に、プロ野球を観てみて欲しい。

リックスのJP投手などの助っ人投手や、ソフトバンクの杉内投手や和田投手など、走者が居ない場面では10秒くらいの投球間隔でポンポン投げる投手も居る。だが、残念ながら彼らは少数派だ。いまのプロ野球の投球間隔は、走者が居ない場面で15〜20秒、走者が居ると30秒強が、まあ普通である。

だが、ファールを打ったり、牽制球を投げると、さらに15秒は遅延する。捕手のサイン交換も意外と重要なファクターであり、走者も居ないのにサインを出すだけで15秒掛かる場合もある。

ためしに、夏に並行して行われていたプロ野球デーゲームと高校野球地区予選をテレビでザッピングして見比べてみた。中日の立浪選手が粘った末に討ち取られる間に、神奈川県予選で、打者2人が凡退し、1人が安打で出塁し、次の打者が凡退してチェンジになっていた。決して冗談ではない。

また、シーズン中盤の阪神−巨人戦で藤川投手が清原選手と対決したとある場面では、走者も居ないのに投球間隔が70秒にもなった。矢野捕手のサイン交換が比較的遅かったことに加え、清原選手がたいした理由もなくタイムを掛けて打席を外し、ノソノソ歩き回ったからである。

こういうくだらないタイムを打者が無制限に取れるのも、野球のルールの異常なところ。バレーボールで喩えれば、サーブをレシーブする側のチームが、サービス直前に自由に何回もタイムアウトをコールできるようなものである。

ロ野球のゲームでは、もっとフラストレーションが溜まるシーンがある。投手交代の場面だ。

たとえば、これもシーズン中盤の西武−楽天戦で、西武の星野投手を森慎ニ投手がリリーフした場面。星野投手がヒットを打たれてから、リリーフした森投手が次の一球目を投じるまでを測ってみると、7分も掛かっていた。

この場面、投手交代が場内にアナウンスされた後も、森投手は1分30秒間にわたって、ブルペンで投球練習を続けた。そして当然のように、ノソノソのんびり歩いてマウンドへ。そしてノンビリとした投球練習が始まり、選手交代に都合7分が掛かったわけだ。

監督が球審に投手交代を告げてから、交代選手が守備位置につくだけで7分も掛かるようなヒドい遅延行為に、何らペナルティが課せられず、注意すらされない。こんなスポーツ、野球以外に見たことがない。

なお、ここで名前を挙げた選手の名誉のために付言しておくが、これはあくまで一例であって、ダラダラやっているのはもちろん彼らだけではない。

ーロッパなんかでは、レジで並んでいると前の客が雑談を始めたり、カフェで「お勘定お願いします」と言ってからお金を取りに来るまで20分掛かることも多い。こんな状況にすぐイライラする忙しい現代の日本人に、プロ野球のようなダラダラした娯楽がウケるとは到底思えない。

今や「プロ野球はダラダラしすぎ」と不満に思っているひとも少なくないハズ。それなのに、オーナーや球団関係者のみならず、選手自身に全く危機感がない。ほとんど公務員である。

「遅い遅い」と言っているだけでは先に進まない。時計を眺めながらプロ野球を観ることだ。そして、一体どれだけ遅いのか、何分くらい客を待たせているのか、具体的な数字を突きつけない限り、彼らは気付くことすらできないのである。

時計片手にプロ野球を観れば、遅延行為を取り締まるための時計をフィールドに設置したくてウズウズしてくること、請け合いだ。そして、こうしたダラダラ野球を観せられるたびに、投球間隔が比較的短いメジャーリーグや高校野球を、我々は無性に観たくなるのである。

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