2006 / 04 / 23
  内角球を避けるのも、プロの打者の仕事のうち

つて、あるテレビ番組の対談で、ある若手打者に「大打者になるにはどうしたら良いか」と訊かれた落合博満(現・中日監督)がこう答えていた。「死球を避ける技術を磨くことだ――」。その若手打者とは、清原和博(現・オリックス)だったように記憶している。

ところが、4月20日の日本ハム戦で、プロの打者なら絶対避けるべき(むしろ、内角高目が得意な打者ならヒットにもできたかも知れない)内角球でダルビッシュ有から死球を受けた清原(打撲で全治3週間)は、こうコメントした。

「5年、10年と野球をできるわけではない。守るべきものを命をかけて守りたい。もしそういうこと(死球)があれば命をかけてマウンドに走っていき、そいつ(相手投手)を倒したい。それでいろんな方からの非難、制裁…。そういうものよりももっと大切なものを守りたい」(サンスポの記事より)

フトバンクのフリオ・ズレータが最低の凶行を起こした、その直後にこれだ。はっきり言って社会人としての、いや人間としての良識を疑う。いや率直に言えば、こんなことを言う野球選手が日本に居ることが、信じられない。

本気ではなく、脅しのつもりかも知れない。だが、だとしたら、いよいよもってスポーツマンらしくない。「また古傷の左手小指に当てられたんだ、無理もない」と弁護する向きもあるかも知れない。だが、何度も同じところに当たるということは、そこを避ける練習を怠っているということだ。何度も何度も、巨額な年俸に込められた期待を同じケガで裏切ってきた、プロの打者であるにもかかわらず!

昨年、中日のタイロン・ウッズが暴行を働いたときにも、私は書いた。どんなに一流の技術を持った投手でも、死球を当ててしまうことは避けられない。死球を当てたことがない投手なんて、存在しないだろう。つまり、打者を職業に選んだ以上は、それを承知の上で職場に就くべきなのだ。140km/hの速球を投げるのが投手の仕事なら、140km/hの速球を避けることも打者の仕事の1つであり、必要な能力の1つである。

そして、そんな不可抗力に対して投手に脅しをかけるなんて、野球選手として見当違いもはなはだしい。内角を攻められるのがどうしても嫌なら、ボールを柔らかくするようにルール変更を主張するか、ユニフォームを脱ぐか、代走要員にでもなるか、どれかを選ぶが良い。

方で、度重なるケガを治しては、また140km/hでやってくる硬球を打ち返していた清原には、私はもちろん尊敬の念も持っている。だが今回は、「周囲の非難よりも大切なものを守りたい」という覚悟なんだと、彼は言っている。だったら、我々ファンもメディアも、今回ばかりは遠慮なく非難してよかろう。

内角球を避けるのが下手だと、プロ野球ファンなら誰もが彼に対して感じていることは疑いもない。そんな能力も伴わない暴力選手がマウンドに走り、投手を殴り倒すようなプロリーグが現実のものになれば、それこそ日本の野球界が「大切なもの」を失ってしまう。

この日本プロ野球史上に残る最低の発言を撤回しない限り、日本プロ野球界は彼を打席に立たせるべきではない。清原も、大切なものを守りたいと言うのなら、テニスの軟球を投げてもらって内角を避ける練習を万全にしてから、打席に復帰するべきだ。それがプロとして当然の対処であろう。


    稲見純也 JunYa Inami


トップページを表示
Copyright © 2006 Jun-ya INAMI. All rights reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送