2006 / 09 / 26
  Jリーグにこそ「再編」を

リーグは9月19日に、2005年度の各クラブの経営状況を開示。30チーム中11チームが赤字だったことが分かった。

人件費が増えていることが要因とされるが、実はJ1の1試合平均観客動員も、一昨年よりも減少している。W杯予選が盛り上がり、J1も最終節まで5チームに優勝の可能性が残る空前の大混戦だったのに、である。今季はW杯イヤーでありながら、J2などはほとんど全てのクラブが、試合平均の観客動員減に苦しんでいる。

秋春制への移行の話もあるが、夏休み開催がなくなったり気象条件自体が観戦に厳しくなるなど、単純に観客減の見込みも大きい。芝の維持など運営費もかさむだろう。代表チームを強化するため、などと短絡的に秋春制をもくろむよりも、まず国内リーグをしっかり整備してはどうなのか。

い起こしてみれば、昨年ガンバ大阪が優勝を決めた翌日のスポーツニュースでは、フィギュアスケートを詳しく報道しながら、ガンバの優勝には一切触れなかった番組さえあった。視聴率も低迷し、NHKには放映権料を値切られる始末で、来季からBSでの中継数も大幅減が確実視されている。

もちろん、Jリーグが掲げる「地域密着」は、全国放送の視聴率とは直接的に連関できないという矛盾を抱えている。プロ野球など他のスポーツの視聴率や中継状況と単純比較するのはナンセンスだ。だが、だからと言ってこういった状況に手をこまねいている訳にもいくまい。今の構造の「限界」が見えてきていると言っても、過言ではないかも知れない。

ころで、世界的にみると、Jリーグの集客力はどうなのだろう。小野伸二(浦和)も昨年までプレーしていたオランダのサッカー1部リーグ、エールディビジと比較してみる。

J1と同じく、18チームが34節を戦うエールディビジ。実力選手が海外に流出し、世界最高とはとても言えないレベルである点も共通している。1試合平均の観客数はと言うと、J1とほぼ同じ2万人弱。「Jリーグと同じ観客動員じゃないか」とも思えるが、内容が全く違う。

まず、オランダの人口は日本の8分の1しかない。つまり人口当たりの観客動員は、日本の8倍なのだ。そのうえ、エールディビジは極端に戦力が不均衡で、PSVやアヤックスなど特定のチームが毎年優勝争いをやっている異常につまらないリーグ(ただ、今季はローダがアヤックスを破るなど好調で盛り上がりそうだが)。オランダ第3の都市デンハーグや、第4の都市ユトレヒトのチームですら、優勝争いに到底加われず盛り上がらないシーズンを強いられている。

さらに、プレミアリーグやブンデスリーガなどのハイレベルなライバルコンテンツがすぐ隣の国にある。イギリスやドイツの電波も普通に受信できるのでテレビ観戦も楽しめるし、ドイツなどは電車ですぐ行ける。それなのに、オランダでは国内リーグにこれだけ観客が入っているのだ。ここから読み取るべきことは、Jリーグにこそプロ野球よりよっぽど改善の「余地」が有り余っているということではないだろうか。

リーグは地域密着を標榜している。欧州ではそれだけでもいい。代表戦やリーグ優勝争いだけでなく、自分の街を応援することが疑似都市間戦争的に盛り上がる。さらに言えば、イギリスなどではたとえばマンチェスター・ユナイテッドやリバプールのサポーターの多くが実はロンドンっ子だったりする、といった事情もある。

だがJのような地域密着では、18チーム中9位と10位の対戦に、欧州ほどサポーターも選手も熱くなれないし、遠くの街同士の対戦に関心が湧きにくい。札幌がJ1から遠ざかれば、北海道のファンは国内最高峰リーグたるJ1を今ひとつ楽しめないわけだ。地域密着は優れた思想に違いないが、国民全体が国内リーグを総体的に楽しめていない現状は、日本では問題ではないか。だからこそ、国民全体が総体的に楽しめる代表戦ばかりが盛り上がるのだ。

日本は、盛り上がるように巧みに工夫されたアメリカ型スポーツリーグに慣れた国でもある。「交流戦つき複数地区制」でも良いし、その先に「プレーオフ」を入れてもいい。欧州的な地域密着に、アメリカ的な盛り上げ方を融合させれば、日本中のファンがより熱中できる白熱のJリーグを作れるはずだ。

W杯にも敗れ、ランキングも下がり、レベルが低いということを謙虚に受け止めるべき現状では、一部で叫ばれていた「J1のチーム数削減」も、真面目に検討するべきだろう。

豪国は、どこも大人気の国内リーグを持っている。代表戦や海外リーグに注目を奪われ続ける今のJのリーグ構造のままでは、日本が強豪国になる日は遠い。舵を切るなら、W杯で負けた今だと思うのだが――。

    稲見純也 JunYa Inami


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