2006 / 10 / 03
  好カードすぎる「開幕戦」

近、国内のスポーツリーグを観ていて、非常に気になることがある。開幕戦が「好カード」すぎるのだ。

たとえば、プロ野球の開幕カードは、「2年前の1位と4位が対戦する」という規定に変わってしまった。そのため、昨年のプレーオフで球史に残る激戦を演じたソフトバンクと千葉ロッテが、今季のパ・リーグの開幕戦でいきなり激突した。

Jリーグも然りだ。毎年12月に翌年の開幕カードが決定されるが、上位チーム同士で開幕カードが組まれることが多い。今季の開幕前に優勝候補の呼び声が高かったのは、ガンバ大阪と浦和レッズだったが(今年のゼロックス・スーパーカップでも対戦している)、この2チームは今季の開幕戦でいきなり対戦させられた。

他にもまだある。女子バスケットボールのWリーグは、3連覇を狙うシャンソン化粧品と、2年連続2位の日本航空のカードで開幕している。もっとひどいのはラグビーのトップリーグ。1回戦総当たり形式であるにもかかわらず、昨季の日本選手権で同点優勝した東芝とNECを、いきなり開幕戦でぶつけた。他の開幕カードも、全て昨季の順位が近いチーム同士(5位と6位、7位と8位など)の対戦をずらりと並べたのである。

幕戦を好カードにしたほうが注目が集まる、という発想は理解できる。だが逆に、開幕カードで優勝候補同士が当たってしまうなんて、ツマラナクはないか。こう感じるのは、「好きな食べ物は最後に取っておく派」の人だけではあるまい。

例えば2つの優勝候補のチーム、AとBがあったとする。開幕してから何試合か、AとBのそれぞれのゲームを観て、その戦いぶりからどっちが強いだろうかなどと予想し、その後でAとBとが全勝同士で激突する――このほうが、圧倒的にリーグ戦は面白い。優勝候補同士が開幕戦でいきなり当たるということは、そこで優勝争いの行方がある程度見えてしまうということでもある。

もちろん、開幕カードには魅力ある対戦を組むべきだ。NFL(米アメリカンフットボールリーグ)などでも、開幕カードは話題のカードとされることが多い。今季も、インディアナポリス・コルツとニューヨーク・ジャイアンツの開幕カードで、NFL史上初の兄弟クォーターバック対決を実現させ、全米の注目を集めた。しかし、前年度にスーパーボウルを戦った2チームをわざわざ開幕カードでぶつけたりはしない。

大相撲の思想も同じだ。初日は日曜日でもあるから、注目力士同士の取組を設定することも多いが、横綱同士の一番はやっぱり千秋楽の結びなのである。

目カード、話題のカードを開幕戦に持ってくるのは賛成。だが、それは「優勝候補同士」の対決であるべきではない。優勝争いの行方が見えるのが遅ければ遅いほど、「リーグ戦」は盛り上がるはずなのだから。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、06年9月26日発売『週刊漫画サンデー』に掲載されたものです>


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