2006 / 10 / 10
  ファインプレーだけでなく熱血も見たい

相撲秋場所八日目、幕下の琴冠佑が、取組後に支度部屋で相手力士を殴る騒ぎを起こした。張り手の応酬となった一番で、頭に血が上ったのである。

琴冠佑は、「騒動のけじめをつける」として引退を表明した。秋場所では奇しくも同じ佐渡ヶ嶽部屋の琴欧州が、負けた取組の後に「何で物言いがつかないんだ!」と激怒し、ひと騒動となっている。

もちろん、暴力は論外だ。審判に文句をつけるなど、とりわけ礼節を重んじる相撲ではもっての他である。わかってはいるのだが、少しだけ彼らを弁護したい。生活を賭け、闘志を持ち、体を張って戦っているのだ。納得のいかない負け方をしたら、暴れたいほど悔しいに決まっている。

そんな闘志や覚悟を背負ったアスリートが戦うからこそ、スポーツ観戦は面白い。むしろ、それこそが、我々がスポーツを観る根源的な理由ではないか。そうでなければ、大相撲ではなく紙相撲を観たって良いのだ。

とえば、アメリカが「世界最大のプロスポーツ大国」と呼ばれる所以も、実はここにあるように思う。アメリカのプロスポーツでは、選手達が見せる闘志が半端じゃない。日本のプロ野球でも、エキサイトして騒ぎを起こすアメリカ人選手や監督が多いことからも、一端がうかがえるだろう。

NHL(北米アイスホッケーリーグ)など典型だ。エキサイトした選手同士の殴り合いは当たり前。むしろNHLはそれを「見せ場」としていて、両者が倒れ込むまで決して誰も止めに入らないという徹底ぶりだ。

暴力だけではなく、プレーにもその闘志が表れる。メジャーリーグでは、外野手が本当に「必死」にボールを追いかける。コロコロ転がるボールにも体を張ってスライディングして食らいつく、といった場面が本当に多い。

それに比べると、日本のプロスポーツ選手は実に「スマート」だ。だが、クールなファインプレーだけでは、プロスポーツとしては足りない。巷で叫ばれる「プロ野球人気の低下」の大きな要因であるとも考えられないだろうか。

004年6月、ソフトバンク(当時ダイエー)の杉内俊哉投手が、千葉ロッテ戦で2回7失点とKOされ、自らの不甲斐なさにベンチを殴り、手を骨折してシーズンを棒に振った。もちろん、プロとして決して褒められた行動ではなかったし、チームに迷惑も掛けた。

だが、そんな彼の行為を単なる愚行として抑えつける雰囲気に、正直私は息苦しさを感じた。なぜって、これほどの「闘志」を見せてくれるプロ野球選手は、他にいないではないか!

かつて星野仙一は、味方の失策に対してもグラブを地面に叩きつけて悔しがり、我々をエキサイトさせた。しかし今はそんな熱血の時代でもない。プロ野球選手が相手にヤジられても、乱闘どころか泣き出してしまう。グラブを地面に叩きつければ、「物を大切にしろ」と諭されるかも知れない。

グラブだって盛り上げるための小道具にもなり得るわけで、そんな「適度な熱血」を忘れていることが、日本のプロスポーツの問題なのかも知れない。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、06年10月03日発売『週刊漫画サンデー』に掲載されたものです>


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