2006 / 10 / 17
  監督が大事なのは当たり前なのですが・・・

シムジャパン(男子サッカー)、王ジャパン(野球)、井川ジャパン(女子ソフトボール)、柳本ジャパン(女子バレーボール)・・・。なでしこジャパン(女子サッカー)を除いてほぼ例外なく、監督の名前を枕に付けて代表チームを呼ぶ国は珍しい。

もちろん海外でも監督の話題は大きく報道されるが、監督の名前を国名の前に付けて代表を呼称することは、一般にない。サッカーW杯でイングランド代表を率いたのはエリクソン監督だったが、「エリクソンイングランド」と言えば、地元ではエリクソン社(北欧の通信機器メーカー)のイングランド支社のことである。

たしかに、「機動力野球」や「つなぐサッカー」といった一言で、チームの特徴を片付けてしまうよりは良いかも知れない。なるほど監督によってチームはガラリと変わるし、選手を招集するのも監督である。ただ、プレーをするのはあくまで選手だ。まず、選手あっての代表チームであることも考えてはどうだろう。

っぱり違和感があるのは、サッカー日本代表に就任したオシム監督の言葉を妙に「ありがたがる」風潮だ。オシム監督の初采配となったトリニダード・トバゴ戦でも、鈴木啓太(浦和)や我那覇(川崎)といった新しい代表選手達が良いプレーをたくさん見せてくれたのに、「試合後にオシムがどんな面白いことを言ったか」ばかりに騒いだ。ゲームそのものをもう少し振り返ってはどうだったか。

オシム監督のサッカーを「考えて走るサッカー」と評する傾向も然り。「考えて走る」なんて、当たり前ではないか。走るべきときに走り、体力の限界と戦いながら、いかに最後までボールを追い、優位なポジションに入るために走り続けられるか、それがサッカーの本質だ。それが劣っていたからW杯で負けたのではなかったか。「考えて走っていないサッカー選手」がいるのなら、ぜひ紹介していただきたい。

そもそも、サッカーの監督は古今東西、自分が不利になることを言わないよう計算してコメントするものだ。9月3日のアジア杯予選でサウジアラビアに負けたオシム監督は、「負けて学ぶのも大事」とコメントし、これも大きく報道された。だが、負けた言い訳のためこういうコメントを言うことも多いのだ。「オシムの言葉」という色眼鏡を通さず、客観的にサッカーそのものを観るクセを身に付けたいものである。

ーコ監督は、選手の自由に任せる放任サッカーと言われた。それでもチームはやっぱり「ジーコジャパン」だった。こうなったら、エリクソン監督が日本代表監督に就任して「エリクソンジャパン」(エリクソン社の日本法人名)とは都合上呼べないようになるか、フェネホールオフヘッセリンク(セルティック)のような長い名前の選手が監督になり、「フェネホールオフヘッセリンクジャパン」とは紙面の都合で呼べなくなるのを願うしかない。

・・・と思っていたのだが、世界バスケに出場したジェリコジャパンの「ジェリコ」はパブリセヴィッチ元監督のファーストネームである・・・。この傾向は、当分終わりそうにない。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、06年09月19日発売『週刊漫画サンデー』に掲載されたものです>


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