2006 / 10 / 29
  サッカーに流れる時間(1)

ッカーでは、「90分間走り抜く」と表現したりするように、あたかも90分間ずっとプレーしているというイメージがある。選手が負傷して倒れゲームが止まってもロスタイムに加算されるから、実質的にはほとんど90分間プレーしているという印象を持っている方も、もしかしたら居るのではないだろうか。

しかしながら実際には、90分のうち「実際にプレーしている時間」は、意外に少ない。たとえば10月21日に埼玉スタジアムで行われた、J1の浦和−川崎戦を計測してみると、どうであったか。

測方法だが、いたって簡単だ。バスケットボールのタイムキーパーよろしく、次のようにストップウォッチを操作すれば良いのである。

(1)ファウルやオフサイドがあったら、FK(またはPK)で再開されるまで一旦停止
(2)ボールがサイドラインを割ったら、スローインまで一旦停止
(3)ボールがゴールラインを割ったら、ゴール(またはコーナー)キックまで一旦停止
(4)ゴールが決まったら、キックオフまで一旦停止
(5)選手交代、負傷者の治療、その他アクシデントの間は一旦停止

・・・こうやってストップウォッチを操作すれば、「実際にプレーをしている時間」すなわちプレイイングタイムを計測することができる。浦和−川崎戦の前半を計測した結果、ロスタイムが2分とられて47分経過後にハーフタイムに入ったとき、手元のストップウォッチの表示は21分45秒であった。

まり、試合時間のうち、実際にプレーをしている時間は、実は半分にも満たないのである。もちろんこれは、この浦和−川崎戦に限ったことではない。たいていの場合、前後半合わせても40分強。10分間のクォーターを4回やっている程度の時間であるから、実際にはバスケットボールと「プレー時間」はほぼ同程度であるわけだ。

「サッカーはバスケットボールよりも試合時間が格段に長いから、疲労回復のために試合間隔を長くとらなければならない」といった感じの言い方をするひとも見受けられるが、誤解だと言えよう。

また、サッカーのニュースでは、荒れたゲームであったことを伝えるために、「実質的なプレー時間が40分を切っていた」などと書く記事も稀にあるが、この表現には注意したほうが良い。「通常は90分なのに40分以下だった」というわけでは、決してないのだ。

なお、フットサルではプレイングタイムのみで競技時間を計測し、原則的に前後半20分ずつ行う(フットサル競技規則第8条)が、これはサッカーの競技時間と実質的に合致している。

て、「ロスタイム」についてはどうだろう。

ご存知のとおりサッカーでは、上述の(1)〜(4)は、サッカーでは「プレー進行の目的のための」時間として扱われ、それは競技時間として堂々と算入される。換言すれば、90分の試合時間のうち50分近くを占める「実質的には空費されている時間」のほとんどは、空費されたままとなる。

ロスタイムとして後から試合時間に加算されるのは、選手が負傷して倒れこんでいた時間や、選手交代に費やした時間や、照明が落ちたり犬が乱入したりして試合が止まった時間のみ。あくまで原則としてだが、上述の(1)〜(5)のうち、(5)だけということになる(競技規則第7条)。

では、そのロスタイムというのは、いかほど正確に計測されているのか。同じ浦和−川崎戦の後半、今度はロスタイムと思われる時間を計測してみた。

ところが、これが実に難しい。いや、これを正確に測るのは、不可能である。

(次週に続く)


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