2006 / 11 / 06
  サッカーに流れる時間(2)

ッカーのロスタイムは、いかほど正確に計測されているのか。前述の浦和−川崎戦の後半、今度はロスタイムと思われる時間を計測してみた。ところが、これが実に難しい。いや、これを正確に測るのは、不可能である。

たとえば、ファウルで選手が倒されても、たいした負傷もぜずに起き上がり、フリーキックで再開されれば、その間の時間はロスタイムに加算されない。だが実際には、ファウルを受ければ選手は倒れて多少は痛がる。その間、「たいした負傷」でゲームが止まっているのか、単なるFKまでの準備でゲームが止まっているのか、線を引くことができないのだ。

このゲームの後半、3人ほどが負傷に倒れてゲームが止まる、明らかなインジャリータイムがあった。その他にも数人の選手が倒されて寝っ転がっていた微妙な時間があったが、それも「負傷の程度の判断」のため浪費された時間として計測に入れてみる。選手交代も4回あった。カードも何枚か出たから、その時間も計測に入れよう。

そうして多く見積もっても、計測した結果は合計で2分40秒。少なく見積もれば、2分10秒くらいだった。しかしながら、実際に取られたロスタイムは結局3分20秒。あくまで私の印象とはいえ、実測に比べると、長すぎる。

後半のロスタイムに入っても、ゲームは2対2の同点だった。ホームの浦和が攻めていた。そういった理由から、実際より多めにロスタイムを取っていたように思える。いや、実のところ「適当」だったのではないか。

とえ第4審判でも、「ロスタイム」を正確に計測することなんて、不可能なのだ。「ロスタイム」を一意に確定できる定義すらないのだから、当然である。

競技規則には、「時間の浪費」や「その他の理由」といった曖昧な表現で、「主審の判断」により追加される時間が記されているだけだ。何を「時間の浪費」と判断するかなんて、主審によって違うに決まっている。極端な話、ボールがフィールドの外に出たときに、ボールを取りに行った時間も「浪費」と言えば「浪費」だし、そうでないと言えばそうでない。これほど抽象的でいい加減な競技規則の条項は、他の近代競技には見当たらない。

換言すれば、とんでもないロスタイムがとられたとしても、こんな規則では誰も主審を取り締まれないのである!

サッカーではロスタイムの長さについて主審が副審などに「セカンドオピニオン」を求めることもあるのだが、ボクシングや柔道の判定じゃあるまいし、競技時間を「オピニオン(意見)」によって決めるというコンセプトからして、おかしな発想である。

するにサッカーでは、プレーしていない時間のほうが多いのに、その時間を算入した競技時間でタイムアップを決めており、そのうえロスタイムという「誰かのサジ加減」まで容認するという、二重のルール上の欠陥を抱えている。

正確な「残り時間」を表示しないことは、点差が開いていても「ロスタイムが多く取られて逆転できる時間があるのでは」と観客に思わせる効果を、たしかに発揮はしている。だが、負けているチームにとっては、「本当はまだ時間があるのにあせって攻撃してしまう」といった不利点があり、ゲームを面白くしているとは言えない。

また、セリエAで行われたとされるように、どちらかのチームが有利となるようにロスタイムを取ったりする八百長の温床にもなっている。ファウルやオフサイドなど疑惑の判定のオンパレードである昨今において、時計が止まらないことは、競技を一旦止めてVTRなどで判定したり審判同士で協議するための時間を取ることを、物理的に不可能にしているという不利点もある。

最近のサッカーは戦術の発展によって、力の劣るチームでも対等にゲームを運べるようになってきているとされ、微妙な競技時間や反則の判定が勝負を大きく左右するゲームばかりになっている。柔軟性にこだわり、都合よく盛り上がるような余地を残すことよりも、いちはやく公正な近代競技になるべき段階に、明らかに来ているのだ。

「バスケットボール方式」でプレイングタイムを公正に計測することは、フットサルでは行われている。サッカーがこのようにできない物理的理由は、一切無い。

ッカーという競技そのものは、もちろん実に面白い。浦和−川崎戦も、鈴木啓や山田の献身的なディフェンスや、ワシントンの個人技など、Jリーグのゲームとしては極めて堪能できるゲームだった。せっかくのこんな優れた競技を、なぜ公正に運営しようとしないのか、そして誰もそれに文句を言わないのか。

それは、サッカーに流れる時間を、誰もが実感していないからだ。みなさんも、ストップウォッチでサッカーを計測してみるといい。たった一度それをやってみるだけで、この素晴らしい競技が、いかにいい加減に運営されているか実感できるだろう。

ただ、ストップウォッチ片手に観戦して本当に呆れてしまうのは、ダラダラ感満載のプロ野球なのだが・・・それはまた別の機会に。

    稲見純也 JunYa Inami


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