2006 / 11 / 21
  大相撲を面白くするための「手」を

士達はもちろん奮闘しているものの、大相撲人気は低迷している。この九州場所も初日から満員御礼が出ないどころか、客席は「ガラガラ」という言葉がふさわしい状況だ。

相撲人気低迷の原因のひとつと考えられているのが、「力士の大型化」。昭和40年代の幕内平均体重は120`程度で、現在幕内で最軽量の安馬(120`弱)のような力士が「平均」だったのだ。かつて小錦が登場したときにも、平和な村に台風が襲ってきたような異質感があったのだが、今は200`に迫る力士も多く、安馬のような力士のほうが逆に異質だ。

力士が大型化したことで、膝や腰の怪我、内臓疾患による休場の連続や早期引退など、相撲をつまらなくする要素が明らかに増えた。それなのに何も手を打たないのだから、角界の腰も相当重い。

考えてみれば、相撲のような競技で体重の下限だけが設定され(67`未満は新弟子に採用されない)、上限がないのもオカシな話だ。柔道でもボクシングでも階級がある。競技の公正さ、力士の健康面を考えれば、階級を作れとは言わないまでも、せめて体重制限は入れたほうが良い。

た力士の体重が増えたことで、スピード感が減り、「手に汗握る大一番」が激減している。実はここ10年ほどで、「寄り切り」「つり出し」「上手投げ」といった、両者四つに組み力を振り絞り合うような決まり手が激減し、「押し出し」「突き落とし」「引き落とし」といった、一瞬のうちに、あたかも偶発的に決してしまう決まり手が急増している。押し相撲を得意とする大型力士が主流になったことが一因である。

相撲人気回復のために、体重制限の導入に加えて、「力士の大きさ」という要素だけで勝敗の行方が大きく決まらないように規定を整えてはどうか。まずは、土俵を広くすることだ。粘り腰のある力士や、投げを武器にする力士が、その力を発揮する機会を増やすためである。

力士が大型化したのだし、日本人の平均的な体格自体も大きくなったのだから、土俵を広げるなんて自然な発想だ。大相撲の歴史上、土俵の大きさは一定でもなく、昭和20年には一時的に直径が30a大きくなったりしている。現在の大きさにこだわる必要はなかろう。

らに、「立ち合い」を少し自由にしても良いかも知れない。仕切り線に手をつく低い立ち合いは、江戸時代に一人の力士が始めた「作戦」だったそうだが、現在は「ルール」になっている。格闘技は柔道やボクシングのように始まるのが一般的で、相撲の立ち合いのようなルールがある格闘技は世界に類がない。

それはそれで面白いのだが、どの力士も低く鋭くが理想とされ、低すぎて0.1秒ではたき込み、なんて相撲も多い。馬力ある大型力士も不当に有利になってしまうし、一考の余地はあろう。20年ほど前の、立ち合いがわりと自由だった頃の運営に戻してみてはどうか。

双葉山の二枚腰、千代の富士のウルフスペシャル、栃赤城のサーカス相撲・・・。手に汗握るパフォーマンスに熱狂した時代を思い浮かべれば、相撲人気を復活させる方法は、実は単純なのではないかと思えるのだが・・・。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、9月12日発売『週刊漫画サンデー』に掲載された内容を変更したものです>


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