プロ野球では来季から、セ・パの上位3球団が、それぞれポストシーズンゲーム(PSG)で日本シリーズ出場権を争う。さて、そのPSGの名称が、「クライマックスシリーズ」に決定した。セ・パのPSGは、それぞれ「クライマックス セ」、「クライマックス パ」と呼ぶのだそうだ。
なぜ単に「プレーオフ」と呼んでは駄目なのかと言うと、来季からシーズン1位チームがリーグ優勝とされる規定に変わるからだ。PSGはあくまで「日本シリーズ出場権」を争うもので、リーグ優勝を争う「プレーオフ」とは違うというワケ(つまり、リーグ優勝チームでない球団が日本一になる可能性がある)。
この名称が公募された時点で、「PSGはPSGと呼べば良いのでは」という疑問の声は多かった。メジャーリーグやNFLでも、ポストシーズンに特別な名前など付けてはいない。予選リーグの後に決勝トーナメントを行う大会形式もよくあるが、決勝トーナメントは単に「決勝トーナメント」と呼ぶ。決勝戦は決勝戦、開幕戦は開幕戦、それで良いのだ。
でもまあ、カッコいい名前が付くのならそれも良いか、と少し期待していたところに、決定した名前が「クライマックスシリーズ」。脱力感を禁じ得ないのは、私だけではないハズだ。
インターネットのブログ(個人の日記)を調べてみても、「格好悪い」「恥ずかしい」「公募し直せ」「絶望的なセンス」「哀しいほどにダサい」など、否定的な声が圧倒的。名称発表の席上で、選手達自身からも失笑が漏れた程だ。
メジャーリーグに倣って「リーグチャンピオンシップ」とか、「セントラルリーグ・ファイナル」とか、そんな程度の名称のほうが相当マシだ。なぜわざわざ、辞書から「クライマックス」などという安っぽい単語を引っ張ってこなくてはならないのか。
「クライマックス」という言葉には、「日本シリーズへの出場争いが佳境を迎えるという意味を込めた」のだそうだが、そもそもこれがオカシイ。
「佳境」とは、物事が進んでいよいよ面白くなってきたぞ、という部分のことを指す。それに対し、「クライマックス(climax)」とは「最高点」のことだ。プロ野球のクライマックスは日本シリーズであって、クライマックスシリーズではない(ややこしい話だが)。
いや、どうせ「クライマックス」という言葉を使うなら、最後の最後のアジアシリーズのほうが、ふさわしいかも知れない。
「クライマックスシリーズ」では長いので、略称が生まれることになるだろう。だが、頭文字をとって「CS」なんて呼ぶと、「CSはCS放送で中継するのか」とか何とか、ややこしい事になりそうだ。「クラシリ」とでも呼ぼうものなら、誰かの尻みたいで、なんともしまらない。
あまつさえ、「クライマックス セ」だの「クライマックス パ」だのと恥ずかしげもなく呼ぼうとするセンスは、いったい何事か。この名称を決定した実行委員会、ネーミングを翻すなら、早いほうが良い。
稲見純也 JunYa Inami
<この記事は、11月28日発売『週刊漫画サンデー』に掲載されたものです>
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