2006 / 12 / 25
  21世紀枠候補校の選考理由にみる、21世紀枠のバカバカしさ

春の第79回センバツ高校野球大会の「21世紀枠」候補校9校が、12月15日に発表された。毎年恒例となったが、高校野球連盟(高野連)発表の選考理由とともに各校の横顔を見ながら、21世紀枠という制度のバカバカしさを考えてみたい。

以下の選考理由は、今回発表されたものと、県の高野連が発表した時のものから、抜粋して示した。なお、この9校のうち2校が、一般選考と同じ来年1月26日の選考委員会で決定され、来春の甲子園に出場する。


●釧路江南=北海道
選考理由: 道東特有の厳しい自然環境の中、公立校として文武両道を実践している。

――昨年もデータで示したとおり、札幌や旭川のほうが、釧路より冬の平均気温は低いし、積雪量も多い。夏の平均気温は、釧路より圧倒的に高い。「道東のほうが道央や道北より自然環境が厳しい」と決め付けるなんて、ナンセンスにも程がある。

また北海道では、札幌南や旭川北など公立の進学校が、最近でも「実力」で甲子園を勝ち獲ってきた。この秋も、全道を制したのは公立の旭川南である。進学校としては釧路湖陵にも及ばない釧路江南が、「公立である」というだけで全国大会に推薦されれば、ほとんど失笑の対象である。


●上山明新館(山形)=東北
選考理由: 部員のマナーが良く、礼儀正しく好感が持てる。ボランティアにも意欲的で地元での清掃活動などに取り組んでいる。今秋の県大会では準々決勝で敗れたとはいえ、強豪東海大山形に善戦

――「好感が持てる」からといって全国大会に出場させようだなんて、呆れ果ててモノが言えない。東海大山形に善戦したというが、野球の全国大会をマジメにやる気があるのなら、勝った東海大山形を全国大会に推薦するのがスジである。


●都留(山梨)=関東・東京
選考理由: 国公立大学合格者が100人を超える進学校で、部活時間を確保するため、通常10分の休み時間を7分に短縮。都立三宅とは、避難生活中に合同練習や試合も行ってきた。

―― ナンセンスすぎて話にならない。国公立大学に合格したのは今の野球部員ではなく、彼らの先輩達である。なぜ今の野球部員を評価する理由になるのか、全く理解不可能。しかも、学業に集中するために必要不可欠な休み時間を削ったことは、むしろ批判されてもおかしくない。

ちなみに、高校野球ファンはご存知のとおり、高野連は都三宅が大好きである。都三宅とつながりのある都留は、それだけでかなり有利な存在と言えよう。


●成章(愛知)=東海
選考理由: 渥美半島の中央にあり、部員は全員地元出身。試合会場へ長距離移動するハンディを克服し、3年連続で秋の県大会ベスト8。

―― 秋の東海大会では愛知県代表は勝ち進むことができなかったため、一般枠では愛知から一校も選抜されない可能性が高い。県大会優勝校を選抜せず、県ベスト8どまりの成章を選抜しようというからには、「試合会場が近かったら、成章は県大会で間違いなく優勝していた」という客観的な裏付けがなければ、著しく不公正である。


●武生商(福井)=北信越
選考理由: 17人と部員不足に苦しむ中、秋の県大会ではベスト4に進出した。13人は学級正副委員長などを務め、生徒活動でも中心的存在。 練習するグラウンドも狭く、他部との共用も強いられている。

―― 秋の北信越大会では福井県代表は勝ち進むことができなかったため、一般枠では福井からも一校も選抜されない可能性が高い。県大会優勝校を選抜せず、県ベスト4どまりの武生商を選抜しようというからには、「部員が多くグラウンドがもう少し広ければ、武生商は県大会で間違いなく優勝していた」という客観的な裏付けがなければ、著しく不公正である。


●県和歌山商(和歌山)=近畿
選考理由: 智弁和歌山を破って初優勝。ひたむきできびきびとしたプレーで模範的だった。生徒会役員など部員が校内で大きな役割を果たしている。

―― 生徒会役員だというだけで、「校内で大きな役割を果たしている」と決め付けるから、21世紀枠に推薦した学校で不祥事が起こって恥をかくのだ。それに何より、「ひたむきできびきびとしたプレー」という選考理由が何とも脱力モノだ。全国どの学校の選手も、ひたむきにプレーしていると思うのだが。


●華陵(山口)=中国
選考理由: エースなどの中心選手の多くがけがに見舞われながら、強豪校と互角に戦った健闘ぶりが評価できる。野球部員は近隣の養護学校などを訪問している。

―― 選手が怪我をしたことが評価されるなんて、一体どういうスポーツ大会なのか。怪我をしないように適切な練習をして結果を出した学校こそ、評価すべきではないのか。来年から、高校球児たちはみんな怪我をしたフリをしたほうが良い。

また、「強豪校と互角に戦った」ことを評価していることから、「強豪校」と「そうでない高校」を、明らかに差別していることが分かる。野球に真剣に打ち込もうと強豪校に進んだ高校生を、不当に不利になるように扱っているのである。互角な戦いをしたのに、「強豪校じゃない学校」だけを贔屓するなんて、到底納得できない。


●高松第一(香川)=四国
選考理由: 創立78年を迎えた県内有数の進学校。学校から遠いグラウンドで時間を有効に使い、文武両道の実現に努めた点や今年の秋の県大会で優勝した実績などが評価された。

●都城泉ケ丘(宮崎)=九州
選考理由: 県内有数の進学校でグラウンドも狭く、課外授業や定時制授業との兼ね合いで練習時間も制限されている。伝統校として地域からの信頼も厚い。

―― 毎年言っているのだが、進学校を評価することは、進学以外の個性ある進路を選ぶことを間接的に否定する、明らかな差別。しかも、野球部員の成績など一切考慮せず、学校が進学校であるというだけで野球部を全国大会に推薦しようとする。あまりにバカバカし過ぎて、お話にならない。


のように、毎年しょうもない選考理由で恥ずかしげもなく、全国大会出場校を独断と偏見で勝手に選ぶ21世紀枠。このバカバカしい枠のおかげで、必死に練習して成績を残した2校の実力校が、涙を飲む。

特に最近問題だと思うのは、上山明新館や華陵といったあたりの選考理由にもあるように、毎年「ボランティア活動」が評価の対象にされていることだ。この21世紀枠が存在するおかげで、高校球児達のボランティア活動が、21世紀枠推薦を狙った何か「イヤラシイ」ものに思えてしまう。

万が一、部員達自身にもそんなイヤラシイ気持ちが生まれてくれば、「ボランティア」の精神を学ぶことなど到底できなくなる。そういった意味でも、「ボランティア活動」を評価して選考理由にするのだけは、すぐにでもやめるべきである。

粋な高校生を見たいファンのための、「21世紀枠」。好投手を擁する高校を選抜できる可能性を高くする、「希望枠」。そして、実力校をたくさん出して大会を盛り上げるために、地域的に異常に偏った一般枠。センバツ高校野球大会が、いかに大人の都合のために行われているかを、物語っている。

しかし、選抜される高校生達には罪はない。悪いのは、このくだらなくも不公正な制度をやめない高野連と毎日新聞であり、それを批判すらできないメディアであり、まだまだ彼らを動かせない非力な私達であるのだ。

そして、高校生の全国大会出場校を、主催者が独断で「選抜」するという、この大会のコンセプトからして、その妥当性が問われるべきである。

    稲見純也 JunYa Inami


トップページを表示
Copyright © 2006 Jun-ya INAMI. All rights reserved.
SEO [PR] 転職支援 冷え対策 オリンピック 掲示板 レンタルサーバー SEO