2007 / 01 / 28
  いまのままでは、八百長追放は永久に不可能

存知のとおり、『週刊現代』に「朝青龍の八百長を告発する」などという記事が載り、物議を醸している。これを受け相撲協会も、各力士に聴取を行うなど、事実関係の調査を始め、法的手段も辞さない構えだ。

仮に八百長が横行する体制であるのなら、いや、こうして常に八百長疑惑が囁かれる体制なのだから当然、その体制改善を進めるべきである。それなのに協会は、個々の力士が八百長をやっているかとか、個々の一番が八百長だったのかばかりを調べている。これでは、進展など全く期待できない。

会の上層部の人間は、元力士である。八百長調査の指揮を執る監察委員長も、元関脇・魁輝の友綱親方だ。もし古くから八百長が横行しているとすると、その八百長をやっていた人間が、いまの力士達の上に立っていることになる。だったら、そんな連中が調査したって、「八百長はない」という結果を出すに決まっている。

師匠である高砂親方(元大関・朝潮)は、朝青龍に問いただした結果「そんなこと(八百長)はない」と答えたと言っている。だが、高砂親方だって現役時代は、「7勝7敗のときの朝潮は横綱より強い」と謳われた人物(下記注参照)なのだから、これだけ聞いて「ああそうですか」と引き下がるワケには、我々としてはいかないのである。

(注:高砂親方(朝潮)は大関時代に通算6回、7勝7敗で千秋楽を迎えているが、全て勝って給金を直している。その相手は全て、既に勝ち越しを決めていた力士だった(うち大関4人、平幕2人)。朝潮が大関だった頃は「大関が強かった時代」だったが、その間7勝7敗で大関が千秋楽を迎えたのは合わせて11回あり、戦績は10勝1敗である)

念のために強調しておくが、「朝潮が八百長をやっていたっぽい」と言いたいわけではなく、「容易に八百長が可能な現体制と同じ体制で相撲を取っていた人間が調査をしたって、我々にはなんの説得力もない」と言いたいだけである。

その意味では、相撲協会が横綱審議委員会に「真剣に調査します」と言うなんて、全く逆ではないか。横綱の稽古にケチをつけるような無意味な行為をする暇があったら、横綱審議委員会が八百長の調査に乗り出すべきだろう。

れにそもそも、個別案件だけを取り上げて摘発したり、各力士に事情聴取していたって、こと大相撲においてはキリがないのだ。

相撲は1対1の勝負。互いが限界ギリギリの力を振り絞って闘う。息が切れてマトモにインタビューにすら答えられない程だ。しかし、雑念がよぎったりして、力が抜けたり闘志が湧かないことは、人間ならあるだろう。それで限界ギリギリの力が出なかったら、それが即ち八百長かと言うと、そうではあるまい。

そのうえ大相撲は、年に何回も場所があり、さらに場所中もノックアウト式のトーナメントでなく何番も取れる形式になっている。たとえば、力士同士が場所中に携帯電話で話をして、「今場所星が厳しいので負けてくれ、来場所は負けてあげるから」などと言うような、摘発・証明が極めて困難な取引が発生しやすい、実に特殊な運営なのだ。

そんな競技で、今のように個々の力士に対して調査をして八百長を摘発しようとしても、「言った言わない」のレベルにしかならず、証明することは不可能だ。当然、取締りなんて夢のまた夢である。

まり、本当に八百長を一掃しようという気概があるのなら、個々の力士や取組だけを取り上げて対処するのではなく、特別に厳しい「八百長防止のルール」をガツンと施行するくらいでないと、全く意味が無いのである。

たとえば、場所中の力士同士の取引を防ぐために、最低限でも場所中は、他の部屋の力士への無線通信手段を完全に奪い、連絡を不可能にするほかない。もっと言えば、関係者同士の接触も、かなりの程度制限する必要がある。少なくとも、通信を固定電話のみに限定して通話記録を監視したりする必要はあろう。

無論こうなると人道的な問題が出てくるし、多くの潜在的な取引は防止できない。だが、相撲の信頼性回復のためには、場所中くらいはこういった徹底的なルールを受け入れ、八百長取引に対策を講じていることを「世間に示す」ことも大事だ。

また、横綱審議委員会には何も期待できないとしても、元力士以外の人間で構成する公正取「組」委員会とでもいった捜査機関を雇って、八百長(そしてドーピングも)を厳しく取り締まるべきだろう。

だ残念ながら、八百長文化でやっていた力士が今協会の上に居るのなら、「八百長を一掃しようという気概」を見せた制度を導入するなんて、期待するべくもない。相撲ファンによる「世論の高まり」が、彼らを動かざるを得ない状況にまで追い込むことを、期待するしかないのだ。そういった意味では、今回の『週刊現代』はそれなりの仕事をしたと言える。

「どうせ八百長だから」と大相撲を敬遠するひとは、意外に多い。ずっと昔から時折湧いてくる八百長問題を放置してきたことが、大相撲人気低下の大きな要因であることを、そろそろ真摯に受け止めてはいかがだろうか。

    稲見純也 JunYa Inami


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