2007 / 03 / 04
  ノルディックスキー世界選手権を「世界スキー」と呼ばせたくはない(2)

界の最高峰、ワールドカップのレースを観ていてまず思うことは、中間計時が少ないことだ。距離が短い技術系のレースでは、大抵の場合、中間計時は2回しかない。この点に限って言えば、20年以上、進歩がないのである。

中間計時を見ながら他の選手のタイムとの戦いを観るのは、アルペン競技において最も手に汗握る瞬間だ。中間計時が増えれば、その面白さがグンと増すはずだ。 F1やNASCARの中継で、矢継ぎ早に表示される情報を消化する面白さを味わっておられる方なら、納得いただけるのではないか。

また、コースが直線ではなく、かつ何台ものカメラを繋ぐ必要があるアルペンスキーでは、水泳中継のように仮想的な目標線を動かすことも技術的にできていない。今後は、そういったテレビ画面における見せ方の工夫も、求められてくるだろう。

して、もうひとつ実現すべきだと思うことがある。それは国別対抗といった「団体戦」の積極導入である。

アルペンスキーのワールドカップ、世界選手権、五輪などでは、実際には各ナショナルチームが一丸となって競技をしている。ウェアも同じだし、先に滑った選手は、跡から滑る同じ国の選手に情報を無線で送っている。その意味では、既にチームスポーツの要素はあるのである。

だが、基本的にアルペンスキーは、個人が戦う競技だという概念が根強い。世界選手権では団体戦という試みが取り入れられているものの、まだまだオマケ的なお祭り要素が強い。

それに比べて、ジャンプやクロスカントリーなどのノルディック競技では、「団体」という概念が一種目として定着しており、五輪でも団体戦が大きな人気を博している。ならば、五輪のアルペンでも、団体戦をやってはどうか。

もちろん、アルペンで団体を行うことには、現実的な困難さはある。アルペンは競技種目自体が多く、かつ悪天候で競技が行えなくなる可能性が高い競技であるため、五輪では日程的に制約があり、競技種目自体を増やしずらい。

それに、エッジにより激しく雪面を削ってしまうアルペンでは、1つのコースを繰り返し何度も使えない。充実した団体戦を行うためには、幾つもコースを新たにつくる必要があり、時間的にも物理的にも難しいのだ。

れでも、2年に1度の世界選手権では、スーパー大回転を男女合わせて4人、回転を同じく4人ずつ行う、男女混合の国別対抗団体戦を既に取り入れている。規模を小さくまとめれば、五輪でも十分導入できるはずだ。

最低限、別枠で競技を行わなくても、個人戦の成績から各国上位を選択して国のポイントを計算するやり方も考えられる(スタート順による不公平があるアルペンでは、あまり好ましくはない方式ではあるが)。

しかしながら残念なことに、2010年のバンクーバー冬季五輪では、既にアルペンの団体戦は採用されないことが決まっている。一度は議論のテーブルに上ったのだが、実現の決め手がなく見送られたのである。

スノーボードなどの新興競技に押され気味な感のある、冬季五輪の花形競技。その地位を守るためには、新興競技で試みられている様々な工夫を、FISはもっと積極的に取り入れていくべきだろう。

内のアルペン界に目を向けるても、草の根レベルの活動が必要な状況でもある。 かつてのブームはどこへやら。国内のスキー場はかつて程の賑わいはなく、外国人スキーヤーの占める割合が跳ね上がっていることは周知の事実だ。

全国中学校スキー大会(この大会自体にはノルディック競技も含まれている)など、資金繰りが苦しく、廃止寸前となっている大事な競技会さえ、多いのだ。佐々木明のような、日本アルペン史上最高と言っても良い選手が登場しているにも関わらず、この状態だ。

日本アルペンの灯を消さないためにも、スキーを滑ることの面白さと、競技を観ることの面白さを、合体させた宣伝活動も必要だろう。テレビのスキー講座でも、ほとんどのスキー専門誌でも、世界のトップが競うアルペン競技の紹介が驚くほど少ない(この違いは陸上やテニスといった他の協議の専門誌と比べると、一目瞭然である)。

プロ野球選手に憧れて野球をやる、それと同じような流れが、アルペンスキーにあるべきではないか。そんなレベルから、日本のアルペンは変わっていって欲しいものである。

    稲見純也 JunYa Inami


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