2007 / 04 / 17
  日本型社会人リーグを守るために

会人野球の強豪・シダックス。アメフトXリーグの日産。昨06年度も、社会人チームの廃部という寂しい話題は相次いだ。

社会人リーグでは、チケット収入が機構側に吸い上げられ、頑張って集客しても、各チームの懐には殆ど反映されない。チーム運営費は、企業の広告費などで賄われている。そのため、企業の方針転換や資金枯渇で、あっさりチームが消滅してしまう脆さを、全てのチームが持っているのだ。女子Vリーグでは、98年から02年のたった5年間だけで、ダイエー、小田急、ユニチカ、日立、イトーヨーカドー、東洋紡といった名門が一気に姿を消した。

こういった現状に鑑み、今の企業型から地域密着型に運営転換し、チケット収入はチーム毎に稼ぐ独立採算にするべきだという意見もある。当然、社会人リーグの改善策とはなり得るかも知れない。

が、もっと先に手を打つべきではないかと思われる問題もある。潤沢な企業系列に戦力が偏ったり、一部の系列企業がリーグの大半を占めてしまい、社会人リーグ自体が面白くなくなる虞が高まっているように思えるのだ。たとえば、トヨタの存在が挙げられよう。純利益が1兆円をゆうに超え、その軍資金を広告費等にジャンジャンつぎ込む、恐るべき企業だ。その広告費には、スポーツチームの運営費、選手やコーチとの契約費用も含まれるワケだ。

今年、男子バスケ全日本総合選手権の決勝で激突したトヨタ自動車とアイシンは、いずれもトヨタの系列企業だ(最近の4大会のうち3回も、決勝がこの対戦になっている)。女子バスケWリーグは、8チームのうち3チームがトヨタ系列。男子ハンドボール1部リーグにいたっては、10チームのうち4チームが、トヨタ系列企業で占められている(トヨタ車体やトヨタ紡織九州など)。

前述のとおり、社会人チームは企業にほぼ全面的に資金を頼っているから、企業から命令があれば、チームは逆らえまい。となると、系列企業同士の八百長なども、考えたくはないが起こり得る。

れに対処するためには、系列企業のリーグ参入規制という策も考えられるだろう。だが、潤沢企業のチームは、他の企業チームが資金難で次々と廃部となるなか、選手の受け皿として重要な役割も担っている。それに系列なんて株式の動きですぐ変わり得るわけで、そのたびにリーグを再編するなど現実的ではない。

そこで、今のように一企業がひとつのチームを抱え込むのではなく、他企業によるスポンサー契約も奨励または義務化してはどうか。たとえばトヨタ自動車をA社が支援し、アイシンを別系列のB社が支援する。こうすれば利害関係者が分散し、八百長の可能性は格段に低くなる。複数スポンサーがつけば、一企業の業績悪化で即座にチームが消滅することも、防げるかも知れない。

…無論、これはあくまで思いつきの一案だ。だが、社会人リーグの現状を鑑みるに、独立採算制や収益分配なども含めた何らかの手を打つことは、もはや急務ではないだろうか。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、4月10日発売『週刊漫画サンデー』に掲載されたものです>


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