2007 / 05 / 07
  松坂、死球後ペコリに「全米大反響」・・・んなわけない

月22日、ニューヨーク・ヤンキース戦に登板したボストン・レッドソックスの松坂大輔が、アレックス・ロドリゲスに死球を当てた。このとき、松坂が帽子を取って謝る仕草をしたことが、日本で話題になった。

問題は、その後の、日本での報道である。メジャーリーグでは、死球を当てた投手は基本的に謝らない。そのため、この松坂の行動が「米国内で大反響」を呼んだというのだ。

サンケイスポーツは、「松坂、死球後ペコリが米国内で大反響」という見出しで、

ボストン・グローブ紙では、松坂が謝っている写真を掲載し「マツザカはAロッドに対しては帽子を取って謝ったが、奇妙なことにジーターには帽子を取らなかった」と報じていた

と報じた。さらに、この記事を掲載したインターネットの某ポータルサイトは、「松坂 死球後ペコリに全米大反響」と見出しを打った。

しかし、である。この記事の内容で、どうして「全米大反響」となるのか、全く理解に苦しむ。

ストン・グローブ紙なんて、単なるボストンのローカル新聞だ。発行部数は40万部程度で、新潟日報や熊本日日新聞といった日本の地方紙と同程度である。そんな地方紙のスポーツ欄に記事が載ったことで「全米で大反響」などと見出しを打つのは、誤報と言って良い。

米国では、国土の広さや、法や文化など色々な点から、各州・各地域の独立度が高く、新聞などの報道も然りである。なのに日本では、ボストン・グローブに載ることと、読売新聞に載ることとを、どうも同列に扱って騒ぐ風潮がある。

「全米」向けポータルサイトの「YAHOO!USA」を覗いてみれば分かる。試合の翌日・23日に、MLBの話題だけで計59本の記事がトピックスとして掲載されているが、「松坂ペコリ」の話題など、ただの1つもない。

要するに、ボストンという一地域のチームの投手が、死球のあとに帽子を取ったというだけで、「全米」で大反響を呼んだわけではないのだ。日本のプロ野球とでは、基本的な盛り上がり方が違うのである。

もそも、「米紙も松坂大輔に注目」とか、「セルティックの監督も中村俊輔を信頼」とか、そんな見出しばかりが躍る日本の報道は、少しおかしくないか。

人気球団レッドソックスのルーキー松坂が、初登板で7回1失点10奪三振で初勝利して与えたインパクト。MVPにまで選出された中村俊輔の、名門セルティックへの貢献。…こんなもの、いちいち現地の新聞なんて見なくたって、分かるだろう?

それに日本人は、海外の報道を真に受けすぎである。たとえば、走者がちょっとオーバーランしてアウトになってしまっただけで、実況がすかさず「メジャーリーグ史上最悪の走塁だ!」と叫ぶのがメジャーの実況。日本人は、そういった英語表現を文字通りに日本語に直訳して、喜んでいるのだ。

イチローの返球を「レーザービーム」と称したり、芸術的な守備を「彼はフィールドをカンバスに変える」と評したコメントは日本でも話題になったが、これらはいずれも米語ではさほど珍しい表現でもない。

もあれ、日本人選手が海外でも通用することを証明してきて何年も経った今、未だに現地メディアの評価や賛辞ばかり気にしていることが少々情けない。

地元の新聞記事や監督のリップサービスばかりに気を取られるのではなく、もっと堂々と、日本人選手の偉大なパフォーマンスを日本人自らの言葉で評価し、報道すれば良いだけなのではないかと思う。彼らは、海外メディアに取り上げられるために海外に渡ったわけではないのだ。

    稲見純也 JunYa Inami


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