2007 / 06 / 19
  競技中の突然死から子供たちを守れ

習中には水を飲むな――」。

中学生の頃まで野球部でそう指導されてきた私は、現在33歳である。つまり、ほんの15年ほど前まで、練習中の水分補給を禁じる危険なスポ根指導は、当たり前だったということだ。 このように、スポーツ科学の発展とともに、指導法も大きく変わってきた。そんな大きな変化が、今また野球に訪れている。

年クローズアップされている、「心臓震とう」という症状をご存知だろうか。野球のボールなどが子供の胸部に当たることにより、最悪の場合、突然死を引き起こすものだ。心臓の収縮が収まる直前の一瞬のタイミングで運悪く外部から衝撃を受けると、心筋が収縮不能になることがあるのだという。13歳から15歳にかけて発症が多く、心臓の持病の有無に関係がない。健康な青少年にも突然発症し得る、実に恐ろしい症状だ。

内野手はこれまで、「ゴロは胸に当ててでも前に落とせ」と指導されてきた。ところが、このようにプレーすることは、実は命にかかわることなのである。私もずっと内野手だったから、運が悪ければ…と思うと背筋が寒くなる。

今年3月の時点で、小学生から高校生まで、日本では過去に18件の心臓震とうの発症例が確認されている。18件というと少なく聞こえるが、心臓震とう自体が最近ようやく認知されてきた症状であり、これまで単なる心臓発作や熱中症などとして片付けられてきたケースも多いと考えると、その数は相当数に上るはずだ。

ちなみに、野球やソフトボールのような小さくて硬いボールが、この症状を引き起こしやすい。アイスホッケーのパックによる死亡事故などはアメリカで報告があるが、サッカーボールを胸でトラップして心臓震とうを起こし死亡した例は確認されていない。

て、この5月、スポーツ用具メーカーのミズノから、内野手が胸部に装着するパッドが発売された。捕手や球審のプロテクターのように重く大きいものではなく、胸の中央部だけをスポット的に守る。価格は五千円弱。子供たちにも「そんなに違和感がない」と概ね好評だ。他にもアシックスなどが、製品化に向け精力的に開発を続けている。この種のパッド装着を義務化する動きは、まだない。だが、普及を加速するためにも、少年野球や高校野球の大会などで、パッド装着を内野手に義務化していくことは必要となるだろう。

加えて、小さな大会でも十分な看護師やAED(自動体外式除細動器)を配置することは必須だ。心臓震とうで倒れても、迅速に対応すれば回復するケースが多いからである。そして、サッカーと異なり指導者資格が不要な野球でも、各チームの監督向けに適宜講習を開催していくことも有用となろう。

学生競技の事故の場に居合わせる可能性が高い私自身も、AEDの講習を2回も受けた。機械の音声案内に従えば、全くの知識のない人間でも安全に使用できる。今年AEDで心肺停止状態から回復した高校野球のケースは、専門家がたまたまそばにいたからAEDを活用できたのだが、今後はそんな運に頼っていてはいけない。

く下からトスしたボールを胸に当てただけで、じゃれていて肘が胸に当たっただけで、タイミングが悪ければ心臓震とうは起こり得る。公園で遊ぶ親子に悲劇が突然訪れるかも知れない、そんな身近な問題だ。まずこの心臓震とうを知ることが、子供たちを守る第一歩である。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、5月15日発売『週刊漫画サンデー』に掲載されたものです>


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