2007 / 08 / 26
  私立校に吹く逆風、公立校に吹く追い風

立の佐賀北(佐賀)が全国を制した、夏の甲子園。「普通の高校生が全国を制した」などと見出しが踊る。日本では、私立校の高校生は野球サイボーグにでも改造されるのか?

もちろん、佐賀北の戦いぶりは素晴らしかった。心から賞賛したいし、敬意を表したい。佐賀北だけではなく、佐賀北に接戦を強いた1、2、3回戦の相手はいずれも公立だったし、ベスト8には県立今治西(愛媛)も残った。だが、学校が公立だろうが、私立だろうが、選手はどちらも「普通の高校生」だ。広陵、長崎日大、帝京などの私立勢だって、素晴らしい戦いをした。

そう思うからこそ、公立校で高校野球を取り組んだ私に、言わせて欲しいのだ。メディアにしても、高野連にしても、「公立だから」と言ってひいき目で見たり特別扱いするのは、フェアじゃない。

ちろん、私立校は一般に、実力のある中学生を集めたり、練習環境が優れていたり、と公立校に対して有利な場合も多い。だが、それはあくまで一般論だ。

サッカーが強い国見高(長崎)、バスケが強い能代工(秋田)、駅伝が強い西脇工(兵庫)、色々な競技の強豪である市立船橋(千葉)などは全て公立だが、実力のある中学生が集まる。東京の帝京高は私立だが、かつて、野球の内野しか確保できない狭いグラウンドを共用して、野球部もサッカー部も全国制覇をなし遂げている。

今夏を制覇した佐賀北も公立とはいえ、一般推薦入試制度(学力試験がなく面接と調査書で合否を決める)でスポーツに秀でた生徒を入学させ、野球部を強化してきた学校に他ならない。普通の入試だけしか無かった私の母校とは全く違うし、私立が圧倒的に有力選手を確保してしまう東京や神奈川とも環境は全く違う。

※ちなみに佐賀県内では、全定員の2割がこの枠を使って進学している。同じく近年旋風を巻き起こしている長崎の清峰(県立)なども、募集人員の40%に一般推薦入試枠を拡大している。こうした県立校入試の流れに、保護者らから「合否基準が不透明」という批判は大きい。

れに思うのだが、今年はむしろ、私立勢に同情すべき年ではなかったか。

特待生問題に揺れた専大北上(岩手)は逆風を跳ね返すことができず、県大会で敗れた。全国的にみても、他の多くの私立校の選手達が、春の公式戦を辞退したり、特待制度の見直しを余儀なくされるなど対応に追われ、野球に集中できる状態ではなかったケースは多い。

佐賀北も、帝京戦での延長で相手のスクイズをアウトにした場面(特に2回目)や、広陵戦での疑惑の押し出しの場面などを見ていれば、審判さえもが無意識に公立旋風を後押ししたかも知れないことを、誰も無碍に否定できまい。

あくまで一般論として公立校を応援したくなる感情は理解できる。ただ、だからと言って、アンフェアな追い風を公立校に吹き付ける高校スポーツは、決して公正じゃない。「公立校なのに頑張った」などという理由で公立校ばかり優遇するセンバツの「21世紀枠」などは、その最たるものであろう。

賀北−帝京のゲームで、帝京の二塁手・上原が二遊間を抜けそうなゴロを逆シングルで捕球し、遊撃手・杉谷拳にトスして一塁に送球する、プロ顔負けの連携プレーが話題になった。ところが、こうしたプレーに対し、「高校生が技巧に走りすぎ」とする批判があるのだと言う。

飛んできたボールに食らいつき、打者をアウトにするための最善の策をとったこのプレーを、「技巧に走りすぎ」とする批判自体がそもそも理解できないが、このプレーを見せたのが公立校だったら…佐賀北だったら…「技巧に走りすぎ」と批判されるどころか、「少ない練習時間でよく練習した」と賞賛されたに違いあるまい。

少子化の影響もあって、前述した一般推薦制度の枠は、拡大の一途を辿っている。私立校への逆風はますます強くなると言って良いかもしれない。そんな今こそ、私立校に吹く逆風、公立校に吹く追い風を、見つめ直してみたいものだ。

学校は私立かも知れないし公立かも知れないが、野球をプレーする生徒は私立でもなければ公立でもない。どちらも同じ、「野球に打ち込む普通の高校生」なのだから。

    稲見純也 JunYa Inami


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