2007 / 10 / 01
  やっぱり大変、富士でのグランプリ

0年ぶりに富士スピードウェイで開催されたF1世界選手権・日本グランプリ。予想どおり、運営の混乱が多発した。とりわけ、愛・地球博でトヨタが成功させたシャトルバス作戦が、大失敗。もちろん、混雑や渋滞など分かりきっていたことだから仕方がないが、問題は手際の悪さだ。

一部報道では、29日(土)の予選終了後、簡易舗装道路の陥没のため「観客の帰りのシャトルバスが最大で2時間待ちになった」と報道されている(媒体によっては「2〜3時間」とされている)が、これが大ウソ。 統計をとったワケではないが、3時間待ちくらいは平均的だっただろう。午後5時前から並び始め、外灯もなく誘導の声すらない難民状態で、バスに乗れたのが9時半だったと言う観客も居た。最後尾は、6時間ほど待たされたようだ。午前中に発生した道路の陥没を、運営本部は全く把握していなかったらしい。

今回、富士スピードウェイには、駐車場(静岡県内で15箇所)に自家用車を停め、そこからシャトルバスでアクセスしなくてはならなかったのだが、誘導の不手際で、駐車場によってバスの到着が異常に偏った。大量の「難民」がバスを待っているのに、ガラガラの状態でバスを出発させ、3台のバスが到着したのに、そのうちの1台にしか乗客を誘導しないといった段取りの悪さが目立った。

タクシーでの帰路を選択した別の観客も、何時間も待った挙句、「1時間に1台も、乗り場にタクシーが来なかった時間帯があった」という。その後ようやく運営側がタクシー会社に連絡したようで、この停滞状態は徐々に解消された。しびれを切らし、交通規制圏外まで(約1km歩けば着く)徒歩で帰ろうとした観客は、「徒歩では入退場させない」という規則のため警備員に止められたそうだ。段取りが悪い上に柔軟性もなかったワケだ。

30日(日)の決勝では、前日よりひどい雨、ハミルトンの独走といった展開もあって、大勢の観客が「残り20周」くらいのタイミングで早々と席を立つ。ところが、それでもシャトルバスは2時間待ち。レース終了と同時にダッシュした観客は、4時間待ち。運営側は長蛇の列の最後尾すら案内できず、観客自らが「最後尾」の看板を回すという有様だった。

運営スタッフとして参加した方によれば、前日のバスの混乱や、「マシンが見えない仮設スタンド指定席」問題もあって、決勝の観客はピリピリ。何度も運営の不手際を観客から説教されたと言い、「インフォメーションカウンターは暴動寸前だった」。不手際を注意したスタッフに逆ギレされたという観客の声もある。

チケットを確認してバスに乗客を乗せたのに、ゲートを通過するためにまたチケットを確認するなどの冗長ぶりで、人の流れが全く進まないというミスもあった。渋滞に加えてこれでは、観客も怒ろうというものだ。

体育館や球場にアマチュアの競技を観に行くと、官のサービスの悪さに辟易とすることは多い。料金徴収の手際の悪さで、駐車場から出るのに1時間も掛かるなんてこともザラだ。「国立」競技場にサッカーを観に行けば、授乳室すらまともに整備されていない不便さに苦しめられる。だが、何万円ものチケット代を徴収する民間のイベントとして、この手際の悪さは異常と言っても良い。

ともとファンの間では、金にモノを言わせたトヨタが、ホンダの鈴鹿からグランプリを強奪したという印象が根付いているが、そんな悪評に拍車をかけてしまった。客席での横断幕を禁止しながら自らは巨大な旗をはためかせたり、国家斉唱の最中にトヨタチームだけがエンジンをスタートさせたりなど、落とさなくても良い評判を落とした格好だ。決勝を観に来る14万人(S席に空席が目立つという珍しいF1レースになったが…)を捌くため、運営の準備にもっと力を注ぐべきではなかったか。お金ならあるんだから。

前述の「マシンが見えない仮設スタンド指定席」にしても、「完成が直前になり、確認作業ができなかった」と釈明したというのだから、驚きである。一人6万円もする七千席もの座席を、設計段階できちんと確認せずに、まず適当に作ってみて、ダメだったら作り直す算段だったなんて、小学生以下だ。

トヨタがスポンサーとなる多くのメディアでは、これらの不手際は縮小されて伝えられるのではないだろうか。だが、トヨタ傘下の富士スピードウェイでのこういった不手際は、確実にF1ファンの心象に大きな影響を与えたはずだ。

だ、10万人を超える観客を集める大イベントF1世界選手権を、30年ぶりに開催したのだという事実は、忘れてはならない(そう言えば30年前は観客の死亡事故があったが…)。F1をはじめとする大規模なレース運営の実績を何年も積んできた鈴鹿、電車でアクセスするというオプションもある鈴鹿と、運営の良し悪しを単純比較することだけは、してはならないだろう。

誰もが知っていた、アクセスの悪いサーキット。スムーズな運営には、物理的な限界がある。2009年から富士では2年に1度しか開催されないから、周辺インフラの整備にも、あまり期待しないほうが良い。我々はそれを承知して、富士に行くしかない。もともと富士開催のF1は、Jリーグ観戦やプロ野球観戦と同列に考えてはいけないのだ。むしろ、富士登山のようなものかも知れない…金はやたら掛かるが。

それにしても、世界陸上やらF1世界選手権やら、日本のイベント運営が評判を落とす一方の今年。サッカーアジア杯でインドネシアを笑ったばかりの我が日本は、もはやどこの国のどんな稚拙な運営も、笑えなくなってきた。

    稲見純也 JunYa Inami


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