2007 / 11 / 11
  「完全試合」は、投手ひとりの記録ではない

年の日本シリーズ最終戦・第5戦での落合博満監督の采配は、おおいに議論の的となった。いや、今でも議論が尽きない。8回まで日本ハムをパーフェクトに抑えていた山井大介投手を降板させた、あの采配である。

しかし、だ。そもそも思うのだが、山井投手を降板させるべきだったか否かばかり議論されていること自体、おかしな話ではないか。「完全試合」というものは、投手ひとりで達成する記録では無いからだ。

私は学生時代、野球部でずっと野手だったが、だから言うわけではない。卒業してから、草野球など遊びで投手もやるようになってから、むしろ考えていたことでもある。

者を討ち取るのは、決して投手ひとりの仕事ではない。捕手を含めたスタッフが相手打者の弱点を研究し、チーム全体で各打者の打球の傾向をスカウティングして守備位置を決め、野手全員が体を張り最高の守備力を発揮して守る。そうやってチーム全体で、ひとりの打者を討ち取るのだ。それこそが、野球という「チームスポーツ」の本質である。

問題の、日本シリーズ第5戦。山井投手の投球が素晴らしかったことは、言うまでもない。だが、二遊間に抜けたと思われた打球に、荒木二塁手がとびついてアウトにした超好守もあった。セギノール・シフトを敷いて、二塁キャンバスよりも右の打球を井端遊撃手が捌いた場面は、2回もあった。良い当たりも幾つか飛んだが、中日守備陣の好守や好守備位置が、安打になることを防いだのだ。こうしてチーム全体で、日本ハムをパーフェクトに抑えたのである。

投手交代の采配にしても、同じ事が言える。監督ひとりが、全て決めるのではない。投手本人や捕手、投手コーチなど全ての意見を総合して交代を決める。「落合批判」や「落合賞賛」にばかり議論が集中していることも、おかしな話であろう。

ちろん、投手交代の是非を議論して監督を評価したりするのは楽しいし、それこそがプロ野球の醍醐味でもあるから、そこにあまり水を差したくはない。だが、「チームスポーツとしての野球」という大前提も、この機会に考え直してみてはどうかと思うのである。

そんな考え方に立てば、投手ひとりが投げ切って完全試合を達成することよりも、チームが勝つことを優先することは当然の考え方だということになろう。山井投手が8回まで超剛速球で24連続三振を奪っていたというなら話は別だが、完投だろうが継投だろうが、「完全試合」の価値に差などないのだ。

無論、現実には野球では、「完全試合は投手の記録」と捉えるのが慣習だ。であるから、正直に言えば私も、山井投手に続投して欲しいとあの場面では思ったし、それほど山井投手の力投は素晴らしかった。ベンチの継投の判断も、相当勇気のいる決断だったに違いない。だが、そういったこと以上に、中日の守備陣やスカウティングも含めた、「中日球団全体のチームプレー」の勝利こそに、思いを馳せたい。それがなければ、あの「パーフェクトの継投」は、そもそもなかったのだから。

まあ、そんな思いを、守備が崩壊したアジアシリーズ初戦の中日ドラゴンズを観て新たにしたワケだ。だが、こうやってグダグタと述べたが、ご存知のとおり中日ファンである私が言いたいことは、要するにこうだ。

山井投手や落合采配にばかり議論を集めるのではなく、フロントを含め中日ドラゴンズの、今シーズンのパフォーマンス全体を称えたい、そして祝福したい。そして、喜びたい。

    稲見純也 JunYa Inami


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