2007 / 11 / 20
  理事長に謝れと言っているようではダメ

青龍の仮病疑惑騒動に、時津風部屋の力士死亡騒動。外国人力士の暴言・暴行など細かい事件も相まって、厳しい視線の絶えない角界である。九州場所は独特の熱気溢れる応援で盛り上がってはいるように見えるが、客席に目立つ空席は、結びの一番でも「まだ幕下の取組?」と思ってしまうほど。これほど不祥事が続けば、相撲観戦を接待などでも使いづらいから、無理もない。

であるが、相撲協会に対する世間のバッシングは、どうもベクトルを誤っている感じも受ける。とりわけ疑問に思うのは、北の湖理事長へのバッシングだ。これら一連の不祥事や騒動に対し、「理事長が記者会見を開いて謝れ」というマスコミやジャーナリストが後を絶たない。九州場所初日でも、理事長挨拶で謝罪の弁がなかったことで、理事長は各メディアで批判を受けた。

別に北の湖理事長が素晴らしい人格の持ち主であるとか、同じ道産子だから擁護したいとか言うのではないし、協会の対応が後手に回ったり誠実さを欠いたりした場面が多かったことも無論である。だが、これらの騒動に対して「理事長が記者会見で謝れ」というのは、おかしな話じゃないか。

論、「相撲協会の理事長はたいした権限がないのだから、彼の責任を追及するのは筋違い」という某元力士の意見に賛同したいワケではない。理事長に権限が委譲されていないのだとしたら、それ自体が問題じゃないか。そうではなく、理事長が権限がある最高位の人間だとしても、彼に「謝れ」と迫るのはおかしい。

横綱が怪我で巡業を休みながらチャリティーイベントでサッカーをしていたのは、横綱本人や親方の指導の問題である。それが即、相撲協会の問題ではない。部屋で死亡事故が起きたのは、その部屋の親方や先輩力士の問題であり、それが即、相撲協会の問題ではない。そういう議論をすっとばして「理事長が謝れ」と騒ぐ世間の反応には、非常に違和感を覚える。

Jリーガーがわいせつ行為で逮捕されたとき、川淵キャプテンや鬼武チェアマンに謝罪の記者会見を要求する者が居たか? 大学のラグビー部員が大麻の栽培で捕まったとき、日本ラグビーフットボール協会の会長に「謝罪しろ」と詰め寄った人間が居ただろうか?? 高校の野球部でも監督や部長や部員によるイジメやしごきが後を絶たないが、高校野球連盟の会長に「謝れ」と言う者が居るだろうか???

かに、角界は特殊な世界であり、相撲協会の体質改善の必要があることなど否定しない。だが、普通に考えて、ある相撲部屋でリンチとの関連が疑われる死亡事件(事故?)が起きたのは、親方や先輩力士達が無能であったから、に尽きる。

さらには、健康管理や救急救命講習を含む親方の教育制度すらないこと、相撲部屋が閉鎖的であり部屋間での交流(つまり自由なトレード)や競争がないこと、批判的な記者を描けば取材できなくなるという言語統制…といった脈々たる角界の体性が、事件の遠因と言えよう。

となれば、これらの責任を現職理事長に押し付けて「謝れ」とばかり言うのは筋違いであるし、建設的でもない。そもそも、理事長が謝ることで解決に向かう問題とも思えない。痛ましい事故をこれ以上起こさないため、上述したような具体的な要因に対応を迫ることこそ、理事長や相撲協会全体に突きつけるべきではないのか。

近、賞味期限の偽装やら何やら、組織のトップが出てきて謝罪する、そんな光景が日本では多い。バッシングが悪いとは言わないが、「誰か偉いひとに謝罪させる」ということが、その主目的になってしまってはならない。

本当に責任を負うべき者が責任をとるのは当然としても、何より事態を改善することが大切。そのためには、誰が、どうしたら良いのか、それを落ち着いて、具体的に考えることが建設的だろう。誰かが謝らないと納得できないのも分かるが、それだけでは先には進まないのだ。

    稲見純也 JunYa Inami


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