2007 / 12 / 11
  「ツー・イニング・オフェンス」の練習を

合の終盤でどういう戦略をとるべきか。それを理解しているひとは、その競技を概ね理解しているひとだと言って良い。

たとえば、サッカーやバスケットボール。リードしているチームは、無理な攻撃を仕掛けない。できるだけパスを多く回し、時間を稼ぐ。もっと簡単な例で言えば、ラグビーやアメフト。残り時間が少なく、4点以上リードされているチームは、キックでゴールを狙うのではなくトライやタッチダウンを狙う攻撃をしなければならない。

こういった「ゲーム終盤の戦略」は、大抵の競技で一般的だ。多種多様な攻撃のオプションがある複雑な競技であるアメフトでは、ゲーム終盤の攻撃戦略に「ツー・ミニット・オフェンス」(試合終了まで2分以内になったときの攻撃という意味)などと、特別な名前が付いているほどである。

ところが、この種の考え方が全く根付いていない競技がある。意外だと思われるかも知れないが、それは野球だ。

校野球などを観ていると、本当にそれを痛感する。ほんの一例を挙げよう。04年夏の甲子園に出場した、鈴鹿高(三重)の採った作戦である。2回戦の浜田高(島根)戦で、0−8と大量リードされていた8回裏に、無死走者1塁の場面で、送りバントをしたのである。

このような作戦は、他の競技ではまずあり得ないと言ってよい。8回裏といえば、あと6つしかアウトが許されない。その間に8点取らなくては負けてしまうのに、わざわざ送りバントでアウトカウントを増やすことなど、考えられないからだ。

(もちろん、「1点を取ることが今後の人生において自信となる」云々といった教育的配慮であるという考え方はあるだろう。だが、野球の試合は勝利を目的としたものであり、それは試合の途中で何点の差がついたかには全く関係は無いはずだ。「点差が開いてしまったので1点だけを取りにいく」という考え方は、「点差が開いてしまったので勝負は諦める」ということに等しい。それこそ、教育的に大問題ではなかろうか)

また、実は同じ大会の、同じく2回戦、旭川北高(北北海道)が岩国高(山口)に敗れた一戦。3点リードされた9回裏2死走者2塁の場面で、レフト前ヒットで2塁走者が無理に本塁に突っ込み、タッチアウト。ゲームセットとなってしまった。

これも、他の競技ではまず考えられない。3点もリードされているのだから、2塁走者が無理して本塁に突っ込んで1点を返す必要など、全くないからだ。この場面、99%セーフだと判断したとしても、2塁走者は3塁で止まっても良い場面である。

毎日のように野球をやっているはずの選手たちにさえ、こういうプレーが頻繁に見られるのは、「ゲーム終盤の戦略」が野球において徹底されていない証拠である。

は、応用問題。次のようなプレーを、皆さんはどう思うだろうか。(3年前のパ・リーグで、実際にあったシーン。今はなき近鉄バファローズの攻撃だが…)。

相手投手に打線が沈黙し、0対1と1点を追う9回裏、2死2塁の場面だ。ここで、チャンスに強い5番打者(北川選手だが…)の打球がレフト前に飛んだ。2塁走者(バーンズ選手だが…)は、アウトになる可能性が高いタイミングだったが、無理に本塁に突っ込んだ。結果はアウト。その瞬間、ゲームが終わった。

さて、この2塁走者の判断を、どのように評価すべきだろうか。私は、これは高度な「ゲーム終盤の戦略」だったと思う。

9回2死といえば、あとアウトは1つしか許されない。打線は相手投手に抑え込まれていた。チャンスに強い5番打者(北川選手だが…)の次の打者も続けてヒットを打つ確率より、外国人選手のバーンズが本塁に突入して、悪送球や捕手の落球などを誘う確率のほうが高いと考えるのは、全く自然である(そういうプレーが褒められるべきか否かは別として)。ならばこの場面、2塁走者は無理してでも突っ込むほうが得策だ――。

この走塁を、スポーツニュースや解説者らは、単にアウトのタイミングで突っ込んだという理由で、簡単に「暴走」と片付けた。この瞬間、やはり野球において「終盤にどのような戦略をとるべきか」、いわば「ツー・イニング・オフェンス」の考え方が徹底されていないことを、私は思い知ったのである。

    稲見純也 JunYa Inami


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