2007 / 12 / 25
  「21世紀枠」は廃止せよ

の甲子園、選抜高校野球大会には「21世紀枠」という特別枠がある。ハンデを克服して活躍した学校などを、一般枠とは別に甲子園に「繰上げ当選」させる枠である。2008年は第80回の記念大会であるため、例年より1校多い3校が最終的に選ばれ(1月25日)、甲子園の切符を手にする。

先日、この21世紀枠の候補校(9校)が発表された。毎年恒例となったが、高校野球連盟(高野連)などが発表したこの9校の「選考理由」を見ながら、21世紀枠という制度のバカバカしさを考えてみたい。

●武修館(北海道)
【選考理由】濃霧、凍土など道東の厳しい自然環境を克服。02年には部員が9人に満たず、大会出場を辞退した経験もある。

…道産子として言わせて頂きたいのだが、道東の濃霧や凍土より、道北・道央の極寒や積雪のほうが、よっぽどキツいハンデだと思う。岩見沢なんてどれだけ雪が積もるか、ご存知だろうか?

そもそも、武修館は釧路予選(当然全て道東勢が相手)を勝ちあがって全道大会に進み、全道1回戦も同じ道東勢の遠軽高。2回戦も、高野連が「自然環境が厳しい」として21世紀枠候補に選んだことがある稚内大谷高と対戦した。つまり武修館は、自然環境のハンデなど全くなく全道ベスト8まで勝ち進んでいるのである!!

また言うまでもないが、2002年に大会を辞退したからといって、一体何だと言うのか。入学もしていない頃の昔話を持ち出して今の部員を評価するなんて、意味が全く分からない。

●大曲工(秋田)
【選考理由】監督が県教委から派遣され社会人野球の日本新薬で指導研修を積んだ。県南勢として39年ぶりの県優勝。堅守のチームで、7試合で失点が9。

…21世紀枠は「ハンデを乗り越えた」ことが選考基準のハズなのに、社会人野球で研鑽を積んだ監督に指導を受けるという贅沢な学校を選考するなんて、支離滅裂も甚だしい。堅守のチームを選ぶ希望枠があるのに、21世紀枠でも堅守のチームを選ぼうなんて、見事な破綻ぶりである。

●安房(千葉)
【選考理由】創立100年を超える進学校。房総半島の南端に位置し、入学者が限られる中で選手を鍛えている。08年春から女子校の安房南と統合される。

…千葉県は、私立の進学校が多い。公立に限っても千葉高や県船橋高などはもちろん、野球でも有名な佐倉高、成東高などよりも成績が下と言ってよい安房高は、千葉県内ではほぼド真ん中の中位校に過ぎない。半島最南端にあるからといって入学者が少ないと考えるのも理論的ではないし、女子校と統合されることが野球部を優遇する理由になるなんて、くだらなすぎて失笑しかできない。

●成章(愛知)
【選考理由】廃藩置県で廃校となるが1901年に再興。準々決勝からのメイン球場である熱田球場まで、自宅から3時間余りをかけて球場入りをする等の困難と闘いながら戦いに挑んでいる。

…開いた口が塞がらないとは、まさにこのこと。一世紀も前に廃校になったことが、なぜ今年の野球部員を評価する理由になるのか、全く理解不能である。熱田球場まで遠いと言うが、熱田球場は準々決勝からの球場だと言うのだから、県大会ベスト4の成章は熱田球場でたったの2回しか戦っていないことになる。

●富山中部(富山)
【選考理由】卒業生にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏や「女性の品格」の坂東眞理子氏がおり、県内屈指の進学校。

●富岡西(徳島)
【選考理由】元副総理の後藤田正晴氏をはじめ二万数千人の卒業生を輩出し、創立111年。進学校で、野球部員も毎年半数近くが国公立大に進む。練習場所や時間に制約がある。

…卒業生に立派な化学者やら政治家やらが居ることが、どうして今の野球部員を評価する理由になるのか、全く理解できない。進学校だからといって優遇すること自体、ナンセンスだ。進学以外の個性ある進路を評価しないのは差別だし、進学校だからといって野球部員が勉学に励み成績が良いとも限らない。

●畝傍(奈良)
【選考理由】1941年夏の奈良大会で優勝したが、戦争で全国大会が中止となり、甲子園が幻に。戦後は2度決勝に進出したが、いずれも惜敗。

…凄まじいバカバカしさである。何十年も前の「幻の優勝」とか、戦後は2度決勝に進出したとか、全て昔話である。今の野球部員を評価して甲子園に出場させる理由には、全くなり得ない。こんな理由で、参加校も多くない奈良県でベスト8どまりの学校を甲子園に繰り上げ当選させようなんて、不公平にも程がある。

●華陵(山口)
【選考理由】部員確保が困難な中、2年連続の県優勝。全校生徒が日本赤十字の会員で、青少年赤十字モデル校。

…部員確保が困難だというが、部員は現在47人もいる(3年生が抜けた秋時点の数字としては、全く少ない人数ではない)。ちなみに、過去にはたった10人で実力で甲子園に出場した学校もあるし、11人で全国準優勝した学校もある。「赤十字モデル校」というのも、「だからどうした」としか言いようがない。

●市長崎商(長崎)
【選考理由】男子生徒が激減し部員確保に苦労する中、県大会で優勝し21年ぶりに九州大会出場。部員が原爆犠牲者慰霊の「平和祈念式典」で総合司会を務めたり、清掃活動で自治体から表彰されるなど地域にも貢献している。

…部員確保に苦労していると言うものの、現在の部員は42人もいる。また、清掃活動などのボランティア活動を評価して甲子園に出そうなんて、バカバカしいにも程があるし、一切やめるべきである。なぜなら、「活動が評価されて甲子園に行ける」という報酬が発生する時点で、もはやボランティアじゃないからだ。

あ要するに、毎年言っていることだが、「野球の全国大会出場校」を、野球以外の比較評価のしようもない支離滅裂なコジツケのパラメータで選考しようなんて、ナンセンスにも程があるのである。

県内一の公立進学校が県大会でベスト8に入り、清掃ボランティアに精を出した他の学校が県大会でベスト4に入った場合、どちらを賞賛して21世紀枠に選ぶべきかなんて、比べられっこない。部員が14人しかいない野球部と、両翼50mしかない狭いグラウンドで練習した野球部と、どっちのハンデが大きいかなんてことも、一体誰が決められよう。

しかし、高野連ら(直接的には、21世紀枠選考委員)は、あたかも自分たちが神であるかのように独断と偏見で各校のハンデやら何やらを勝手に比較考量し、21世紀枠出場校を決めているのである。公平・公正であるべき学生スポーツでなされているこのような暴挙が、この21世紀にもなって続いていることを批判すらできない日本のメディアは、無能というより他ない。

そのうえ困ったことに、神様どころか、高野連には模範校を選ぶ能力がカケラほどもない。毎年のように、模範校として高野連が選んだ学校から不祥事が発覚している。今年も、高野連が模範校として21世紀枠候補に選んだ金沢工(石川)が、部員の自転車盗みで候補を辞退した。

の21世紀最悪の制度とも言うべきバカバカしい枠のせいで、懸命に野球に取り組み結果も出した実力校が、甲子園の切符を失い涙を飲んでいることを、我々は考え直すべきである。

ただ勿論、選ばれる高校生に罪はない。悪いのは、こうした不公正極まりない制度を作って喜んでいる、一部の大人たちなのだ。

    稲見純也 JunYa Inami


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