2008 / 01 / 29
  ハンドボールの予選をやり直すと言うのなら

存知のとおり、ハンドボールの「中東の笛」問題で、北京五輪のアジア予選がやり直しとなる。

昨年行われた男子の予選における疑惑判定のVTRが繰り返し流されているが、実はカザフスタンで行われた女子予選のほうが露骨だった(撮影さえ禁じられた)。この予選で日本が韓国に競り勝ったのも、「カザフスタンを優勝させるために韓国に負けてもらう必要があったために日本有利の笛が吹いたから」とする声が多い。やり直しの予選で、日本が韓国を撃破することを望む国内では、そんな話は煙にまかれているが…。

そんな実情であるから、少々疑念の残る説得力のない急な「予選やり直し」の強行も、我々は応援すべきだろう。何年も中東の笛に悩まされてきたのに、負けた今回になって慌てて国際舞台に強く訴える行動に出た韓国や、韓国が動かなければ何もしなかったであろう日本にも、納得はいかない点は多々残るが、目を瞑ろうじゃないか。

かし、考えてみよう。もし、これが逆の立場だとしたら? 日本人審判の技量が著しく低く、日本が有利になるような判定を連発してしまい、さきの予選で日本が代表権を得てしまっていたら…。日本の世論は「予選やり直し」に賛成するのだろうか。

私は、自信を持って「Yes」と答えられない。日本人は、本当に日本が可愛くて仕方がないように思えるからだ。たとえば、朝青龍が帰国を切望すれば、「家族に会いたいなら日本に呼べばいいじゃん」と平気で片付けてしまうのが、日本人である。その一方で、イチローがメジャーリーグで一仕事終えて日本に帰ってきても、「帰ってくるな、家族をアメリカに呼べ」と言う日本人はいない。

ふるさとの家族を思い、ふるさとに帰りたいというのは、参勤交代の頃から日本人が持つ暖かい心だと思うのだが、帰省先がモンゴルとなると話が急に変わる。成田からモンゴルに帰るより、江戸から薩摩に参勤交代で帰るほうがよっぽど大変なのだが。

少々余談だが、場所前の朝青龍に対して、「1日でも稽古を休むなんてとんでもない」と相撲評論家や小結止まりだった元力士が雁首揃えて批判していた。結局、毎日稽古をしている日本人力士で、朝青龍を上回る成績を上げた者はいなかった。それでも、ウェイトトレーニングに重点を置く彼の仕上げ方は悪で、日本人古来の「毎日やみくもに土俵で稽古」が最善なのだ。つまり、日本人は日本人選手が可愛く、日本人のやり方こそが最善なのである。

もそも日本のスポーツ界は、アジアハンドボール連盟の露骨な運営を、偉そうに批判できる立場ではない。たとえば、バレーボール。アジア予選も兼ねているワールドカップを、毎回自分の国で開催しているのは、一体どこのどいつだ。しかも、日本有利になるような日程に、毎回露骨に組んでいるのは、どこのどいつだと言うのか。

わりと視聴率も高く、多くの国民が観ているはずのバレーボールで吹き荒れまくっている「日本有利」には全く気付かず、「中東の笛」とばかり騒いでいるこの現状。日本が不利になるような予選やり直しだったら、日本人は今回の中東勢のように怒り出すに違いない。

して、ハンドボール。予選をやり直して満足している場合ではなかろう。ずっと昔にこのコラムでも書いたことがあるが、ハンドボールは結構、判定が曖昧な競技である。たとえば国内最高峰の日本リーグで競技を観ていても、ショットを打つ前にゴールエリアに足が付いても、気付かれず笛が吹かれないことはワリとある。

つまり、ハンドボールのジャッジは、難しいのだ。五輪予選のような重要な国際大会には、そうしたジャッジを中立な立場で監視する人間を、他の大陸から招集してコートサイドに置く。国際大会では、ビデオ判定を義務化する。こういった暫定措置でも何でも良い。他の競技でも類を見ない、ハンドボール史上最大の汚点とも言える出来事が起こったのだ。国際スケート連盟が曖昧なフィギュアスケートの判定基準を変更したように、国際ハンドボール連盟がそれくらいするのは当然だろう。

そしてその時は、韓国に引っ張られなければ何も出来なかった日本が、今度こそイニシアチブをとってみてはいかがか。もっとも、その前に、フィギュアスケートがそうであったように、国際オリンピック委員会のほうからそんな圧力が掛かる可能性も高いが…。

    稲見純也 JunYa Inami


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