November 2003

2003/11/29  キレって何?
球通と言われるひと達が、ピッチャーの良し悪しや好不調を論じるときには、本当に色々な言葉を使う。

キレ、伸び、球威、球質、球が走っている/走ってない、・・・

野球ファンの皆さんは、「これらの用語の意味がわからない」なんて恥ずかしくて言えないかも知れない。しかし恥を忍んで言うが、私はこれらの用語の意味がさっぱりわからない。

日、プロ野球ドラフト会議が行われたが、指名された投手の特徴を論じた評などを少し探してみるだけで、以下のような表現が山のように見つかる。

 …140km前後ながらキレ伸びがある速球を…
 …各投手によってキレ、伸び、球威、球質、角度など違いがある…
 …もう少し速球に球威キレが出ればエースになれる逸材で…
 …バランスのいいフォ−ムで伸び球威のあるMAX148キロの速球を…

さて、これらの表現から以下のことが結論できる。

 (1)「キレ」と「伸び」は、違うパラメータである。
 (2)「球質」と「球威」は、違うパラメータである。
 (3)「球威」と「キレ」は、両立可能である。
 (4)「伸び」と「球威」は、両立可能である。

変化球の「キレ」は分かるとしても、速球の「キレ」とは一体なんなのか。一般に、ボールの回転数を上げれば「伸び」は増すが球は軽くなる。「伸び」があり、かつ「球威」のあるボールとは、一体どういうボールなのか。具体的に示して欲しい。

「今日はスピードは出てますが、球は走ってませんね」

などと解説された日には、もうお手上げだ。「スピードがあるのに走ってない球」とは一体どういう球なのか。

物理学的に言えば、ボールの運動を論じるとき、そこには「ボールの速度(ベクトル)」、「ボールの回転速度(ベクトル)」の2つのパラメータしかない。たった2つのパラメータの組み合わせで、「スピード」と「伸び」以外に「キレ」だの「球の走り」だの「球威」だの「球質」だのという特性が出てきて、しかもそれら全てが人間の目で判定可能だなんて、はっきり言ってあり得ない。眉唾も良いところだ。

ジテレビのバレーボール・ワールドカップの中継で、「スーパーエース」が「超すごいエース」のことだと勘違いしているNEWSのメンバーが、「山本選手、さすがスーパーエースですね!」と興奮していた。バレーボール用語で「スーパーエース」とは単に「セッター対角」のことを指し、昔で言えば単なる「ライト」である。野球通を気取って、「このピッチャーはキレがある」だの、「今日は球が走ってますね」などと言う連中は、痛々しいコメントを連発するNEWSの連中と何も違わない。

具体的なパラメータではなく、「キレ」「球が走っている」「球威」などという不明瞭この上ない表現を使って、通ぶってピッチャーの好不調を批評する野球論者は、まず疑ってみることである。



2003/11/21  大事なもん無くすなよなー
ランダと言えば風車とチューリップ」などと言っているようでは、とてもスポーツファンとは呼べない。

先日のサッカー・キリンチャレンジカップでは日本代表の欧州組6人が出場したが、そのうち2人がオランダの1部リーグ・エールディビジに所属している。日本のたった9分の1の面積しかない小国・オランダに、日本は代表プレイヤーを2人も送り込んでいる。

人口も日本のわずか8分の1だが、全国民のおよそ3分の1が何らかのスポーツクラブに所属して活動しているという世界でも稀に見るスポーツ国家、それがオランダである。スポーツにおいては、技術が成熟しその成長が飽和してくると、体格の良いプレイヤーが絶対的に有利になる(体格の差を技術で埋めることが難しくなるから)。その意味でも、世界最高と言われる平均身長を誇るこの国は脅威だ。

ランダと言えば、古くは柔道のアントン・ヘーシンクの印象が強烈だ。現在でも、カラー柔道着を推進するなど柔道界における存在感は大きい。ボスマン判決以降、国内リーグのレベルは落ちたとは言え、現在FIFAランキング5位のサッカーは語るに及ばない。今回のワールドカップには出ていないが、バレーボールは男女とも世界のトップであることは周知のとおりだ。また何と言っても、ボス、リツマ、ポストマと次々に名前が浮かぶ圧倒的な選手層のスピードスケートは世界一。スラップスケートを開発したのも無論オランダである。デブルーインやファンデンホーヘンバンドら、競泳でも世界トップ選手を多数擁する。他にも、フィールドホッケーやウォーターポロ(水球)をはじめ、オランダが世界のトップを走るスポーツは数知れない。ご存知のとおり、野球も欧州では強豪中の強豪である。

シドニー五輪では、全出場国で8番目に多い金メダル12個(日本は5個)を獲得。もちろん単位人口当たりのメダル獲得数は、ずば抜けて世界一である。

ちなみに、スピードスケートの人気が高すぎて、アイスホッケーは弱い。また国土に山が殆どないため、アルペンスキーやノルディックスキーの選手は皆無。しかしボブスレーがそこそこ強いというのは面白い。また、国内ではテニスの人気が結構高いのに、世界的に優秀なテニスプレイヤーが育たないという点は、日本との興味深い共通点と言えよう。

何はともあれ、「青森と言えばリンゴ」、「ドラゴンズの井端と言えばまばたき」、と言うのと同じくらい、「オランダと言えばスポーツ」なのだ。「風車とチューリップ」がまず最初に浮かぶようでは、スポーツファンとは言えまい。

ころで、フェイエノールトの小野選手が、オランダ人子役のクインティちゃん(大事なもん無くすなよなー)とミッチくん(実はファンなんです)と競演する、トヨタのテレビCMはご存知だろう。どんな良いドラマもセリフ1つでぶち壊す、ヘタクソな子役で溢れるこの日本では、この2人の演技が人気なのも何の不思議もない。

さて現在放映されているこのCMでは、画面後方に風車が少なくとも3基も見られるのだが、これは車でさんざん探し回らなければ見つからないような珍しい場所と言える。カローラフィールダーの機動性を示す優れたCMだと言えよう。かつてオランダ国内に1万基あった風車は現在900基ほどしかないのだ。ちなみに余談だが、これまでこのCMシリーズのロケ地は全てロッテルダムで、今回のCMのロケ地も恐らくロッテルダム近郊だと思われる。

更に全く使えないトリビアだが、藤田選手の所属するユトレヒトの本拠地・ユトレヒトは、お馴染みのミッフィーちゃん(旧うさこちゃん)の故郷である。ユトレヒトを訪れたなら、スタジアムも良いが、まずはミッフィー博物館に行ってみよう。



2003/11/15  北海道日本ハム
界初のドーム球場、ヒューストンのアストロドーム(アストロズの本拠地は現在ミニッツメイド・スタジアムに移っている)は、夥しい数の羽虫がナイターの照明に集まってきてしまうため、必要に迫られてドーム球場となった。トロントのスカイドームも、雪を防ぐために必要に迫られてドームとなったことはご存知のとおりだ。そして日本でも、「必要に迫られて」ドームとなった球場が1つだけある。もちろんそれが札幌ドームだ。

この札幌ドームを本拠地とする北海道日本ハムが誕生する。日本ハムは今期の札幌最終戦で過去最高の2万8千人の観客を集めた。人気者・新庄選手の入団の可能性も報道されるなど、にわかに期待が高まっている。しかし北海道日本ハムには、囁かれる不安要素がやたら多い。

月10日、日本ハムが福島でダイエーとの主催ゲームをした。パ・リーグの首位球団を迎え、滅多にプロ野球が来ない福島で、夏休みの日曜日にゲームをしたというのに、観客席はガラガラ。30000人収容可能な県営あずま球場は半分も埋まらなかった(1万5千人という発表だったが、サバ読みの可能性が高い)。現状、日本ハムというチーム自体にはこの程度の集客力しかないのだ。

唯一札幌を本拠とする人気スポーツチームであるコンサドーレ(そろそろマトモな名前に変えてはいかがか)もJ2で9位と低迷し、経営する北海道フットボールクラブの巨額累積赤字を返せる見通しが立たない。こんな状況で日本ハムがコンサドーレと競合したら共倒れになるのではないかという不安も大きい。

辺境の北海道ではFA権行使率も高くなろう。道産子の目玉選手はと言えば、21世紀枠というアホな制度でセンバツに出場した鵡川高の池田選手くらいしかいない。雪印の牛肉偽装の煽りで札幌ポラリスも廃部になったばかりだというのに、また牛肉偽装企業が札幌に来るのか、と誰もが内心思っている。

地下鉄で福住駅まで行き、そこから狭い歩道を10分以上歩かなければ球場にたどり着かない。厚別に行くのも面倒だった札幌市民が、福住に足しげく通うとも思えない。人気も実力もパッとしないパ・リーグ球団を観に行くよりは、サッポロビールでも飲みながら好きな巨人戦をテレビで観よう。どうせ札幌で上手く行かなければ東京に帰るんだろうし…。

かし個人的には、実は北海道日本ハムの成功に期待している。

かくいう私は、当時プロ野球が全く来なかった北海道の地方都市で子供時代を過ごした。そんな子供の頃、いちど札幌円山球場で、たまたま日本ハム対近鉄戦を観たことがある。古屋やソレイタ、江夏を初めて見た。江夏の球がすごく速かったこと(高橋一三をリリーフした後だったからそう見えただけかも知れないが)、スタンドの応援団のおっちゃんが面白かったこと、たったそれだけで、北海道とは何の関係もない、馴染みも何もなかった日本ハムが好きになった。その後、北海道では結局セ・リーグばかりをTVで見ざるを得ず、中日ファンに戻ったわけだが、球団が札幌に来ればそんなこともなかろう。

子供にとっては、球団名が印象の悪い企業の名前だろうが、道産子が居なかろうが、何の関係もない。道民の9割以上が巨人ファンだが、まっさらな子供達に期待しよう。日本最高の集客力を誇る福岡ドームだって、地下鉄の駅から10分以上歩くではないか。

確かにコンサドーレは一層苦しくなるかも知れない。しかし、日本ハムの札幌移転自体が失敗に終わるとは、どうしても思えないのである。



2003/11/8  自己犠牲
ジア野球選手権(兼五輪アジア予選)の日本VS台湾戦で、打撃好調だった日本代表の谷選手が、序盤の打席で送りバントをした。

現在日本球界で最高の右打者である谷選手が出てくるたびに、田村亮子がどうこうとしか言えない、程度の低い実況は放っておくことにする。このバントを見て、日本テレビのプロ野球解説者で、我々の想像を絶する超無根拠解説でお馴染みの掛布氏は、興奮してこう言った。「これはサインではないと思います。谷クンの自己犠牲の精神の現れですヨ」。

そもそも、犠牲バント(sacrifice bunt)の「犠牲」とは、打者が自己を犠牲にして走者を進塁させるという意味ではない。チームの作戦として、アウト1つを犠牲にして走者を進塁させる、という意味である。しかし「犠牲」の精神が大好きな日本人は、アウトを「死」と訳していることもあって、犠牲バントと自己犠牲の精神を結びつけて賛美し大騒ぎする。しかし、これはスポーツにおいては極めてヘンテコな考え方である。

どんなチームスポーツにおいても、各プレイヤーが好き勝手なプレーをしては勝利は覚束ないのは当たり前のことなのだ。例えばバレーボールで、本当はスパイクを打ちたいセッターが、我慢してエースにトスを上げることを「犠牲トス」と言うか? サッカーにおいて、ボールをとった中盤の選手が、自分で無茶してドリブルしてシュートを打ちたいのを我慢してフォワードにボールをパスする行為は「犠牲パス」なのか?

本当は打ちたい打者が我慢してバントすることは、チームスポーツにおいては犠牲でも何でもないのである。

んな日本では、「犠打世界新記録」という何ともコメントしがたい記録に対して、当然のようにマスコミが大騒ぎする。別に川相選手を尊敬しないわけでも、軽蔑するわけでもないのだが、この「記録」はナンセンスも甚だしい。

まず、レベルも試合数も戦術も、細かく言えばボールもバットも違うメジャーリーグと日本とを単純に並べ、メジャーの記録を抜いたら世界記録だと騒ぐことからして訳がわからない。こんな日本メディアは、高校野球の対外試合で年間56本の本塁打を打った高校生が現れたら、「王とローズを抜いた日本記録」と騒ぐに違いない。

そして、そもそも「犠打の数を誇る」という考え方自体が、少なくともアメリカ人には理解不可能である。例えば1番から8番まで強打者がずらり並んだチームがあったとして、9番打者だけには仕方なく送りバントを命じていたとしよう。この場合、このチームで犠打数が最も多いのは当然この9番打者だが、アメリカ人はこの9番打者を殊更に称えるというセンスは理解できないのだ。

ースボールは、投手対打者という1対1の対決が極めて強調される特異なチームスポーツである。しかし、あくまでベースボールは個人の戦いではなく総合力の戦いだ。送りバントを「自己犠牲」などと殊更に賛美し、強打者との勝負を避けて敬遠することを「卑怯者」だと罵るのは、戦時中の特攻隊思想から抜け出せず「スポーツ界の時代劇」と呼ばれて久しい日本の高校野球に毒されたベースボールファンに多くみられる症状でもある。

ダイエーの松中選手は、小久保選手を巨人に放出したダイエー球団に対し非難の意を露にした。そんな彼をみて、不況による減給にあえぐ日本のサラリーマンなら、「どうせ自分自身は大幅な年俸アップを要求するクセに、財政の苦しい球団を非難するのもなあ・・・」と誰もが思っただろう。こんな松中選手が、年俸のダウンを自ら申し入れ、その代わり小久保を呼び戻せという行動を起こすのなら、「自己犠牲」とも呼ぼうものだ。勿論、そうしないことを非難しているわけではないが、犠牲とはそのくらいの行為を指す。走者を進めるためにコツンとボールを転がすことは、チームスポーツにおいて「自己犠牲」でも何でもないのだ。



2003/11/1  バレーボール
レーボールワールドカップが開幕する。何と言っても、アジア選手権でイランにもパキスタンにも勝てず、インドよりも下の順位に終わった男子日本代表の戦いぶりと、どうにも不細工な(これは個人の意見なので読み流していただきたい)NEWSがどれだけ痛々しい姿を見せてくれるかが注目だ。

誰もが言いたくてウズウズしているが我慢していることをあえて言いたいのだが、バレーボールという球技は観戦スポーツとしてはとっくに限界を超えている。世界的にメジャーなスポーツとなり技術が成熟した結果、ボールをバコンと打ってベチャっとコートに叩き付けるだけのスポーツになってしまった。完全ラリーポイント制になって、手に汗にぎることもなくなり、右から左に行って右にたたきつけられるボールを見つめて催眠効果を誘うだけのスポーツになり下がっている。

このことからも分かるように、いろんな意味でバレーボールは非常に特異な球技である。例えば、ラリーが多い分、レベルの高い男子よりレベルの低い女子のゲームのほうが面白い。そして、実は観戦スポーツとしてこれが一番の問題なのだが、試合の流れを変える価値あるプレーが、派手なスパイクではなく地味なブロックであるのだ。ベースボールで言えば、ホームランは打って当たり前、犠牲バントが決まるか否かがゲームの分かれ目になるという現象を起こし、知らないうちに盛り上がりに欠けているわけだ。

ころで、ワールドカップをはじめとするバレーボールの世界規模の大会は、テレビ放映権料の確保が重要な条件となっている。そのため、ジャニーズ事務所と大々的でバカバカしいビジネスを展開しているフジテレビが中継を確保するような、日本を中心に開催されている。すなわち、世界のバレーボールはジャニーさんにすがって細々と存続していると言っても過言ではない。そんなことなら、そろそろ世界的に抜本的なルール改革に打って出てはいかがだろうか。

単純にボールを変えてスパイクのスピードを落とすだけで良いのだ。その結果コートを広くする必要もあるだろう。要はビーチバレーの人気沸騰を参考にすりゃ良いというわけだ(もちろん、その結果ビーチバレーとの共存が難しくなるという問題はあるが、そんなことを言っている場合ではない)。

すでに、背が高いだけで圧倒的に有利になるという面白くなさにテコ入れする試みもある。身長制限をしたり、柔道やボクシングのように身長の階級制にした大会が開催され始めているのだ。これはバスケやバレーのように、身長によって大きくアスリートの門戸を閉ざしてしまう因果なスポーツには興味深い試みであり、むしろ今まで無かったことが不思議でもある。

た、テレビ中継も改善の余地ありだ。現代バレーの本当の魅力は、バシバシ打ちつける時速百数十キロのスパイクではない。コートの左右を一杯につかうクイックなど、xy平面の連携と動きである。それをネットの真横からz軸だけを強調する視点でばかり中継するから単調でつまらないのだ。バレーボール中継はなぜか、同じネット系球技のテニスの中継のようなアングルは殆どテレビで観られない。理解に苦しむ。

それにしても、ジャニーズ事務所も少しはバレーボールのことを考えたらどうなのか。今週まで夜11時にフジテレビで10分間放送していた番組は、当初「バレーボールワールドカップ」という応援番組のはずが、いつのまにかNEWSがくだらないバカ話をして下手なカラオケを歌う番組になり、ほんの5秒くらいしかバレーボールに触れない。バレーボールだって、こんな事務所にすがって生き延びたくはなかろう。テレビ放映権の地獄から脱皮し、今こそ自ら抜本的に生まれ変わってほしいものだ。






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